地獄メンヘラ男女が読めるぞ!
と教えて知人に読ませた結果、
胸糞が悪すぎる…
と大不評。しかし(なぜか)最後まで読まれていたのがサターンリターンって漫画。
作者が女性というコトもあってか独特の生々しさ・痛々しさが良い意味で最悪で、メンヘラ指数としては初期の椎名林檎。メロウあたりの情緒不安定っぷりで、読む人によっては処方・服用されるおクスリの量が増える塩梅である。
回避するなんて止めておけ
お前の弁護をしているマシンをぶっ壊してあげるよ
というワケで、今回はサターンリターンについて。
- 徹夜が辛くなってきた
- 霜降りより赤身が好きになった
- 美容院で主婦雑誌を置かれるようになった
という20代中盤以降・アラサーを直撃。登場人物も容姿やら年齢といった現実的な苦労・苦悩を背負っているので読み応えがありすぎてヤバい。というか疲れる。それでも読んじゃう…。
それでは、まとめていきます。
と言う方は、申し訳ないがブラウザバック推奨。すまん。根幹にかかわるネタバレは無論 避けるけど、要所にネタバレ含む画バレがある。そこは注意してね。
もくじ
ざっくりと!
サターンリターン
【サターンリターン/土星回帰】意味…
土星の公転周期が約30年であること。そのことから占星術では、約30年に一度、人生での大きな転機が訪れると言われる。土星は「凶」の象徴であり、この時期に人は自殺しやすいとも言われる。
サターンリターン あらすじ
書けない小説家・加治理津子(かじりつこ)。
5年前に書いた小説を最後にヒット作が生み出せず、一発屋を自称しながらも主婦として穏やかな生活を送っていた。
ダラッとした生活。
ある日、かつて最も心を許した男友達・アオイが夢に現れ、 理津子に問いかけた。
「それ ほんとうに お前の人生?」
電話の着信で目が覚めた理津子は、 アオイ(中島)が自殺したことを知らされる。
昔輝いていた夢
現在の夫婦生活
大切な人の死
目を背けていた“喪失”の人生が 動き始めるーー
というのがサターンリターンの大まかなあらすじ。
不幸が付きまとう『加治里津子』
……
……
まるであいつに
関わった人間全員
不幸になるみたいな…
と、負の引力を感じさせる加治理津子。
被害者なのか加害者なのか分からず、主人公なのかそうじゃないのかすら曖昧な主要キャラクター。小説家としては男の心境を細かく書けるのに、元カレには『抱いてくれないなら死ぬ』といった男心をまったく分からない発言(勃つもんも勃たんぞ…)をしたりと色々と謎な人物。
暗い結婚生活。小説家として才能が枯渇したと評される30歳前後の加治が、ふらふらと何かを必死で探しているような描写がコワい。不幸や災厄、自己矛盾などを無理やり飲み込んで豹変していく様が凄まじい。自意識が希薄そうでいてやはり過剰なところが絶妙でドン引きする読者多数。
死んだ一人の男をめぐるミステリー
大筋としては、加治の死別した友人をめぐるストーリー。
『死ぬ』とか『死にそう』という人がなかなか死ななかったりする中、予告通りに30歳手前で自殺をした中島(アオイ)。死の直前に8人もの女性に「結婚しよう」と謎のメールを送った彼の真意を求め、関係者を探り過去に心を巡らす、というミステリー要素が非常に強いサターンリターンである。
ちなみに筆者の知人男性からは断トツで不人気なキャラクターのアオイで
人の女を寝取ってばっかりやんけ…
という意見が多数。
漫画なのに、ここまで男(非モテ)の心を波立たせるのは鳥飼 茜の凄さに他ならない。
サターンリターン作者
鳥飼 茜
綺麗なマンガはほかの人が描けばいい
自分は、生の人間が描きたい
と、自分の表情を鏡で見ながら描いている作者の鳥飼茜さん。その気合が如実に表れているので、随所に垣間見えるキャラクターの表情がヤバい。
泣き顔の不細工さ。
判子絵のような平たいマンガを読んでからサターンリターンに戻ってくるとウッとなる。現実が希釈されてなさすぎる。『あれ、今おれマンガを読んでるんだよな??』と不安になる。
ジェンダー的なコトを言うとフェミがコワいが、やっぱり女性作者にしか出せない雰囲気があると思う。作者が“鳥飼茜”っていうのもデカい。普通の生活してたら滅多に出会わないような毒々しい男女が良く出てくるサターンリターン。特に出会い系女が超リアルで容姿といい、やさぐれ感といい去年Tinderで知り合った女のソレでした。
ちなみに旦那は浅野いにお。ここでハッとした読者は漫画玄人。よく分からない人はおやすみプンプンでも読んで3日間くらい意味も分からずにゲンナリ落ち込もうね。
1話無料で読める!
読んでみるのが一番。以下のサイトでサターンリターンの1話が無料で読める。気になった方は是非。
サターンリターン
おすすめポイント
と、このままだとジメジメしたメンヘラ御用達の鬱マンガと思われてしまいかねない(ん?合っているのか?)。そこで最後に、陰鬱なストーリーをスラスラ読ませてくれるポイントを紹介しておくよ。
探偵役?『小出くん』
文芸編集者の小出(こいで)君。
加治理律子の作品に感激し、どうにかヒット作を作りたい小出君。”取材”のために大阪まで自費で行ったり、自費でホストクラブを払ったり、ロレックスを質屋に売られたりと散々な目に合わされたりする。
そんな小出君の飄々とした小物感がナイス。読み心地が非常に良い。イケメンだけど女慣れしていないところなんかもキュートでグッド。加治、中島(アオイ)という意味深で面倒な人物群の中でとっつきやすい。ヒロインは小出。
直観力が優れているらしく加治が抱える謎について探偵チックに探るのが小出君。重苦しい展開が多いサターンリターンを読みやすくしているのは間違いなく明るく真面目なキャラクターの小出君が大きい。
小出くんの(頼れる)彼女 マキ
突如、小出君の元に転がり込んできた無職のマキ。自宅に侵入しては鍋を焦がしながらジャムを作るという強烈なクセの強さ。初登場からしばらくは
『なんだこのメス犬は???』
と不安でしかなかったが、物語が進むごとに好感度が爆上がり。3巻以降はもう、頼もしさしか感じなかった。
重苦しい展開が続いても、空気を読まないマキのツッコミ・推理が冴えわたる。張りつめてて読者が苦しくなってきたところで軽くギャグをかましてくれたりする。サターンリターンを安心して読めるのはマキのおかげ。伊達にMARCH出てない。
強キャラ!秋葉先生
個人的にサターンリターンで最も魅力的なキャラクターが秋葉ひらり先生。破天荒な素行がアレだが、しっかりとした考え・意見を持っており、小出君をサポートしてくれる強キャラ。
「こちら、低能を煮込んで発酵させた物が『不幸』になります」ってカンジでいただけないわ
小説家として気持ちの良い言い回しをしてくれるので爽快。ご都合主義的に物語を進行していけるのは秋葉先生のおかげ。伊達に3度も離婚してないぜ。
サターンリターンの良心
いっぱい言葉をかけちゃダメ。
言葉で御そうなんて言葉を商売にしてる人間に失礼だよ。
全部分かり合おうなんて相手の可能性縮めるだけだし、
咲こうとする花は疑わなきゃ勝手に咲くよ。
など、名言も多数の秋葉先生。
出てくる男女がほぼ全員ひねくれているので秋葉先生が出てくれた時の安心感たるや。サターンリターンの勝確演出。
総括:サターンリターン
以上、サターンリターンの読評でした。
生と死と性、がドロドロ描かれているのがサターンリターンって漫画。自暴自棄になった女達のセックスや、男女のひねくれた感情も、一方で救いを求めて死を意識しながら生にしがみついているところも超絶リアル。孤立を深め、境遇の不満を他者にぶつけるような負の連鎖のオンパレード。
あ、複雑そうな女達に限らず、
男の抱える心の闇まで痛烈に描かれていたりする。なんだこの男は。Twitterで毎日2ダースは目撃するぞ。
実を言うとサターンリターン。当ブログ読者から
と1巻をプレゼントしてもらい、見事に沼ったのがサターンリターン。やはり鬱屈した思春期を過ごしたアラサー文系オタク女子のピックアップはハズレない。ありがとう。明け方まで全巻一気読みした挙句、歯がボロボロ抜け落ちる夢を見てジットリ嫌な汗をかいて起きました。最新話まで単話購入したので金欠です。
そんなワケでサターンリターン。
読んでいて気持ちの作品ではないけど、読んだ後に得るものが多い漫画だと思います。辛いことを知ってる人は優しくなれる、的な。不幸を知っているから幸せを感じられる、的な。
長くなったけど
- 人生の後学として
- 鬱々としたミステリーとして
楽しめる作品のサターンリターン。気になった方は是非 読んで、嫌な夢みて起きてね!
それでは!
こちらも読まれてます