刺さる人には致命傷?『ちひろさん』という漫画がアレで万人にはおすすめできない件

僕は今 ホッとしてる。もし中坊のとき「ちひろさん」という漫画に出会っていたら多分 友達が周囲から消えるくらいには現実世界で支障が出てたと思うからな。危なかったぜ……

あ どうも、中学2年の時 鉄コン筋クリートのイタチの真似して腕に包帯巻いてた時期が一瞬あります井家と申します。自作ポエム?自作ポエムの話はやめてくれないか!!

 

 

まずはじめに述べておくが

 

胸焼けするファンタジー漫画

漫画なのでこんな奴いるワケないという風に読むにしても、主人公と対比しての敵役的な立ち位置の人物をとことん憎たらしく醜く描いているところが読んでて不快に感じました。
作者が実際に出会った嫌な人を自分の創作物でイジメるお人形遊びかと下衆な勘繰りをしてしまいます。

 

業界にいる私から見たら

とても陳腐。
私は男性ですが、こんな女性はいないし、風俗の経歴のある女性が街の中で堂々と前の仕事をさらけ出す事もないです。

そして、何故かまちのみんなの人気者になる事もないです。(芸能は別で)
作者は妄想だけでこの作品を書いてると思いますが、いかにもこの手の仕事に関わった事がない、物珍しい世界を偏見に満ちた一般の人の漫画です。

 

というレビューが上位にレコメンドされるほど、超 読み手を選ぶ作品である。いや読み手を選ぶというか、刺激が強いので好き嫌い関係なく何かしらリアクションの出る漫画だ。シンプルな絵柄から想像つかないくらい、裸の心に訴えかけてくる感覚

 

 

 

とにかく人に勧め辛い作品だ。が、こんなアングラなブログの、こんな記事をノコノコ読みに来る諸君には是非 おススメさせてくれ。人間関係・社会・出世欲などに翻弄され、戸惑い、疲弊した人に超絶おすすめしたい「ちひろさん」という漫画。君なら、きっと分かる。

 

 

引用:ちひろさん(著:安田弘之)3巻

 

 

 

ともかく、個人的には後遺症が残るレベルでぶっ刺さった漫画「ちひろさん」の魅力を語ってみる。

 

 

 

 

漫画『ちひろさん』の魅力

まずは概要をチョロッと説明しておく。

 

といっても内容は特にない。

これといって目的もゴールもない。

 

引用:ちひろさん(著:安田弘之)1巻

 

海辺の町、小さな弁当屋で働く風俗嬢上がりの『ちひろさん』という30代の女性。そんなどこにでもいそうな女性の周りの群衆劇を描いたマンガである。

 

そんなの、面白いの?

ここら辺が評価の分かれるところで、キッズに好まれないポイント。ある程度 人生を迷走した(orしている最中)の人間が『分かる…』としみじみ感じるのが、人間味あふれる登場人物達による雑多なストーリーなのである。

 

 

引用:ちひろさん(著:安田弘之)1巻

 

何不自由のない生活を送るも、どこかに違和感・嫌悪感を感じている女子中学生

 

 

引用:ちひろさん(著:安田弘之)4巻

 

昼夜問わず働いて、ストレスで一杯いっぱいになっているシングルマザー

 

 

 

引用:ちひろさん(著:安田弘之)5巻

 

何かに思い悩んでいる新任の先生など、現実世界に確実にいるようなタイプのキャラクターが登場し、、、登場し、、、、

 

 

 

 

 

登場するだけなのである。

特に問題は解決することはない。

 

 

引用:ちひろさん(著:安田弘之)5巻

 

人間って

言葉が使えて便利だけど

言葉のせいで伝わらないことばっかり

 

 

別にストーリーがあるわけはない

 

分かりやすい解決談や教訓があるわけでもない

 

 

作者の安田弘之氏によると

『ちひろさん』も、前作『ちひろ』も
次にどうするか予め決めたことはありません
オチが決まっていたということもありません

 

作者の自分が言うのも変ですが
彼女が何をし、誰とからみ 何を話すかは
会いに行ってカメラを回すまでは分からないのです

引用:ちひろさん 第1巻 あとがき

とのこと。

 

道筋は決まっていない「ぶっつけ本番」な漫画である。

しかし、読了後には何か大きなものを学び得たような気分になる、そんな漫画だ。最終第9巻を読み終えて、『読んだ』というより『読破』とか『読了』のような仰々しい単語が似合うような濃厚さ。絵のシンプルからは想像もつかない独特の雰囲気が際立つ作品である。

 

 

 

シンプルで語りすぎない絵

まず第一に諸君に伝えたいのが、絵の素晴らしさ。

安田弘之氏の絵が無駄な線がなく、読んでる人には十分に抜群に伝わる画だと思う。が、

最低でも「鬼滅の刃」くらいの画力ないと読む気にならないんだけど…

と 知り合いの女性が言っていたように、画力がイマイチ…という所感を持つ方が少なくないようだ。絵柄がシンプル=下手、という狭すぎる了見。決めつけの刃。バカか?手塚治虫って知ってっか?読んだことないなら小学校の図書館に行け。とりあえず火の鳥全巻読んでこい。

 

 

絵がなんかツボじゃない…

といって読む気になれない方もいらっしゃるかもしれない。が、そりゃあんた、勿体なさすぎる。デフォルメが如何に絵の上手い人にしか描けないか分かってない。好き嫌いは置いといて、もうちょっと見聞を広めよう。漫画くらい見た目で判断するのはよせ。

 

 

何が言いたいかと言うと

引用:ちひろさん(著:安田弘之)3巻

 

シンプルだからこそ考える余地がある

ということに尽きる。

 

 

 

引用:ちひろさん(著:安田弘之)3巻

 

描写しすぎないからこそ話や心情、ちょっとした言葉や行動、表情への考察に集中できるということだ。

 

 

 

 

 

昨今の描き込み量が半端ない漫画を読んでいる人からすると、やや物足りないかもしれない。しかし、オーブリー・ ビアズリーが好きな著者 安田弘之氏が

シンプルで口数が少ないけど、

その奥の深く広い世界への入口のような絵が好きだ。

 

引用:ちひろさん 第3巻 あとがき

と述べてるように、最小限の絵柄から汲み取れる量は半端ない。良い男・信頼できるヤツが口数が少ないように、良い漫画は読者自身に考える余地を与えるものが多い

 

 

 

 

 

 

 

絵柄で忌避しようとしている方がいたら一考してほしい。そこまで気構えずともサラリと、疲れたときに読む絵本感覚で手に取って読んでみてほしい。

 

 

 

考える余地。大人の道徳書

先述したように、多くを描かないところが「ちひろさん」の魅力だと思う。読者自身に想像させる余白・余地が残ってる。

 

問題提起→解決

という明快さはないものの

引用:ちひろさん(著:安田弘之)1巻

 

サービスってね

何でもやってあげる

ことじゃないからね

 

必要最小限で語られる言葉に気付かされることが多かった

 

 

描写が簡素だからこその味。押しつけがましい説得を一切感じないところも疲弊した諸君らにオススメしたいポイントである。

 

引用:ちひろさん(著:安田弘之)1巻

 

悩みって

ほんとはすごくシンプルなことを

あーだこーだ言い訳することから始まるのね

 

 

引用:ちひろさん(著:安田弘之)1巻

 

 

……

 

 

引用:ちひろさん(著:安田弘之)1巻

 

答えはもう出てるのよ

あとはそれを飲み込む覚悟ができるかどうかだけ

 

言葉も絵も最小限。

勘違いしてほしくないのは「最低限」でないことだ。何かを足しても引いてもバランスが崩れてしまうような絶妙なバランスで組み立てられた漫画だと思う。

 

 

滅多にないが勧善懲悪(?)的な話もある。

引用:ちひろさん(著:安田弘之)1巻

 

スカッとジャパンのような分かりやすいヤツ。捻くれ者の僕としては今更2ちゃんとかTwitterのコピペのような話をされてもイマイチ グッとこない。し、それを連発されようものなら寒く感じちゃうタイプなんだけど、「ちひろさん」のソレには

 

引用:ちひろさん(著:安田弘之)1巻

 

妙な虚しさを含んでいる。「ショムニ」「紺野さんと遊ぼう」等、10巻にも満たない巻数でテレビドラマ化された裏には、作者の鋭く深い人間観察力があるんだろう。ちなみに著者は今年で56歳になる。年の功、というものもあるのかしらん。

 

 

読んだ後 温かい気持ちにもなるし、消化しようもない虚しさも残る不思議な漫画だった。

 

 

 

 

 

総括『ちひろさん』の感想とレビュー

以上、「ちひろさん」についてのレビューだった。10巻以内に終わる漫画として、願わずとも大人になってしまった苦悩を持つ社会人の皆さんには強くオススメしたい。

 

 

冒頭でも述べた通り、

男性著者だからね…

こんなにカッコいい女性になったのは風俗をしたからだ!みたいに勘違いして捉えてしまったら、それを読んだ子がまだ10代で、簡単にその業界に足を突っ込んでしまいかねない描写が気にかかります…。丁寧に扱うべき繊細な問題に対して、思慮が浅いにもかかわらず描いてしまったゆえの不快さを感じました。男性はこんなミステリアスでエロい女いたらな〜って感じで読むんでしょうかね

引用:めちゃコミック

 

読めない人にはホントに読めない漫画だ。

映画とかで逃走中の犯人に「シートベルトしろ!ウィンカーつけろ!道交法違反!」とか言っちゃう人にはホント 受け付けない漫画だと思う。趣味や趣向もあるが、年齢が低い人にはオススメしないようにね。感受性が高いとヘンな方向に走っちゃうのは想像に容易い。

 

 

去年で20代も折り返し地点に差し掛かった僕にはグッとくる良作だった。

 

引用:ちひろさん(著:安田弘之)1巻

 

「ずっと会いたかった人に会えた気がする」

と思わせるような感覚。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い悩んでいることがある人がいたら是非。

得策が見つかるわけでもないが、心が軽くなったり、モヤが晴れるような読了感を味わえたりするぞ。

 

 

ぼんやりしていることが罪悪感

楽でいることが楽じゃない

そんな時代を僕等は生きてます

引用:ちひろさん 第2巻 あとがき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全身に血が巡って、身体ごとフワッと抱きあげられる。

 

 

そんな体験をしてもらえれば幸甚に尽きる。

 

 

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(追記)

6月10日まではコミックシーモアで1巻無料で読める。時期が迫ってるのではやめにどうぞ!

 

 

!追記!

2023年、映画化されてた!

有村架純主演!

くるりが主題歌!

マンガの映画化にはトラウマを抱えている筆者ですが、これは観るしかねぇぜ!

 

 

 

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それでは

 

 

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