【生活保護って?】「健康で文化的な最低限度の生活」のネタバレ含む感想レビュー

自己責任

という言葉、とくに意識せず使ってはいないですか?

今回紹介するのは「健康で文化的な最低限度の生活」。

タイトルが日本国憲法第25条 第1項の条文「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」から採られている通り、

なんとなく皆が忌避する「生活保護」のリアルに迫る

超社会派マンガである。生活保護について、

なんだかんだ言い訳して働きたくないだけだろ

こっちは汗水たらして働いているのに、なにもしないで勝手に金がもらえるのはズルい

と思われる方は是非、一読してみてほしい。

扱っている題材が題材なので、結構ズーンとくる。Salyuの「Emergency Signs」のような感じ。

 

もともと僕は自己責任論者だ。

新宿駅付近の路上で寝っ転がってるホームレスを見て、

もっと良く考えて生きてればここまで堕ちなかったでしょ…
怠けて生きてたんだろうなぁ…

とか思ってた。ただ「健康で文化的な最低限度の生活」を読んでいるうちに、世の中にはいろいろな世帯があって、いろいろな人がいて、いろいろな人生があることが分かった。権力者のように傲慢な俯瞰から見て、本当に救済が必要な人達でさえ「自己責任」という一語で断罪する姿勢を取っているコトが恥ずかしくなった。

 

 

というワケで、今回は歴史漫画として人気な「健康で文化的な最低限度の生活」について。

 

※ネタバレを含みます!

1コマたりとも余計な情報は入れたくねぇ…

という方はブラウザバック。細心の注意を払って記事にしますがネタバレはネタバレ。余計な情報を入れたくない方は注意してね。

 

 

 

マンガ「健康で文化的な最低限度の生活」
ネタバレ含む概要(あらすじ)紹介

東京都東区(ひがしく)役所に就職した義経えみる。

福祉事務所生活課に配属され、生活保護業務を担当。

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

生活保護受給者と日々接して人の人生、ときには生死に関わることになる。社会福祉制度に疎く、人の気持ちに気付く能力も低いと自己認識する義経は配属先に不安を覚える。

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

生活保護を受給する人の人生に、ほどよく介入することが難しく思い悩んでしまう。生活保護を受給する人、と一言で言っても色々なタイプがいる。精神を病んでいたり、アルコールに依存していたり、肉親から性的暴力を受けていたり…。

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

人の人生に介入する、

というハードな仕事を経て、ゆっくりとだけど着実に成長する主人公を見ていて何かしらのモチベーションを貰える。

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

深刻なケースに遭遇し、苦悩しつつも着実に人に寄り添える人間になっていく過程が力強く描かれていた「健康で文化的な最低限度の生活」だった。

 

 

 

国を支える「生活保護」について超わかる

人が人間らしい生活を送れるように国が支える仕組み

が生活保護である。人が生活していて病気になったり、働けなくなったりしてお金に困ったとき、それでもちゃんと人間らしい生活が送れるように、国がその足りない分のお金を出す。大まかに言うと、そんな感じ。

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

いやいや自分で頑張ればいいじゃん…
なんで他の人が、その人の分まで働かなきゃならんのよ…?

と、僕は本作を読む前は思っていたけど、人生は何があるか分からない。いつ自分の生活が崩壊するのか分からない。そんなときに誰からも手を差し伸べられず、

自己責任でしょ

という一言で片づけられてしまう社会は住み心地の良いモンだろうか?

生活保護を受給しなきゃいけないなんてかわいそう…

ではなく、

生活保護を受けるなんて許せない…!
私だって辛いのに…!

という意見の多い現代だからこそ、是非 一度は読んでみてほしい。生活保護のような福祉は、社会的弱者の社会的強者に対する暴力を抑止するためのコスト、無敵の人を生み出さないための予防策、という見方もあるが、それ以上に自分の知見を拡げ、世界の見方が変わる傑作だと思う。

 

 

どういった人が生活保護を受給するのか?

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

どういった人が生活保護を受けているのか?

について良く分かっていない人も是非 本作を読んでほしい。僕は正直、そんなに生活に困窮してないけど受給して、なんだったら普通の人よりも余裕のある生活をしてる、みたいに思ってたんだけど、

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

……

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

……

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

ホントに色々な人がいて、それぞれ唯一無二、住人十色ともいえる苦境に立たされていた。少なくとも幸せに、悠々自適に暮らしてる人は皆無だったよ。

 

 

不正受給が多いのではないか?

引用:日本財団ジャーナル

 

なんか「生活保護」って聞くと、不正受給してる人が多いイメージある

という方もいると思うけど、間違ったイメージだ。まぁ普通に働いていると「こんなに引かれるのかよ税金…」とイライラするのに、それを不正に受給されたとなっちゃ徹底的に叩きたくなる気持ちも分かるけど、そもそも不正受給の額が全体の1パーセント未満であることも調べていく上で分かった(PDF外部リンク)。

 

無知な僕でも知っていたくらい生活保護は「不正受給」と同列で語られることが多く、国民感情を煽る。そういうワケもあって、支援を決める行政へのプレッシャーも強い。

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

だからこそ「水際対策」として、本当に必要な人かどうかを査定する審査が厳しすぎるようになった。結果 本当に必要な人が弾かれないように「審査を監査する人」が出たりする始末だ。

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

そのくらい、現在では簡単には不正ができないようになっている。

本来 生活保護の対象となる人の中で、実際に利用している人の割合は2~3割といわれているそうだ。そのくらい、必要な人にいきわたっていないのが「生活保護」である。後述するが、厳しすぎるようにも見える「審査」によって、本来 頼るべき役所に不信感を募らせる登場人物もいた。

 

 

怠けているだけでは?

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

怠けてるだけでしょ…?

と思う方も、是非 本編を読んでほしい。

 

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

世の中には、色々な人がいる。

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

働きたくても働けない人間もいる。健康で精神的にも余裕のある人ばかりじゃない。そんなことも分からずに、

生活保護を受けるなんてズルい!
怠けないで働けよ!

なんて思うのが、いかに「世間知らず」なのか。

働ける健康な体と精神があることに感謝して、助けてもらう側よりも助ける側に回れた幸運を噛みしめたいところ。

 

 

そもそも 怠けてるって何だろう?

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

一人ひとりに適性があるように、容量がある。

器用・不器用はあれど、自分なりに生きようとしている人しかいないのかもしれない。

 

 

 

とりあえず読んでほしい
「子供の貧困」編

7巻から始まる「子供の貧困編」は凄まじかった。

なりたい大人像は人それぞれだけど、他人に寄り添える度量が身に付くと思う。別に福祉の仕事をしていなくても「こういう風な人がいて、苦しんでいるんだ」と考えられることによって、多分きっと今より住み心地の良い世の中になると思うので是非。なんだったら7巻から読んでも大丈夫だぞ。

 

 

 

子供にはどうしようもない「貧困」

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

誰が悪いのか?

というと非常に難しい。

親じゃないの?

いや、親だって貧困の中に育っている場合が多い。

生活保護家庭で育ち、進学は出来ず、劣悪な職場環境を転々とするので社会的な信頼もゼロ。どうにかして当面のお金をやり繰りするために切羽詰まった生活をしている場合が圧倒的だ。シンママでもあればなおさら正規の仕事に就けない。

 

じゃあ誰が悪いのか?

っていうと、「誰」と、特定の人物に焦点を当てられるような簡単な問題でもないことが分かった。あえて言えば社会構造というか、貧困が遺伝しやすい性質になってしまっていることだと思う。

 

とはいえ、

親がちゃんとすれば貧困は断ち切れるんじゃないの?

という意見もあるでしょう。

たしかに親さえしっかりして、貧困状態にあるなら子供はつくるべきじゃない、と当事者でもない蚊帳の外にいる僕達は当然のことのように思う。

 

だけど、

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

……

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

どうもそんな簡単な問題でもなく…

まぁ色々な意見はあると思うけど、悪者探しに躍起になるのではなく、適切な支援をどうするか?ということを教えてくれるのがマンガでも登場するケースワーカーさんというプロフェッショナルだ。半田さん(くるくるメガネ)といい金子さん(ちょいしゃくれ)といい、とでも心強い先輩が登場するぞ。

 

 

フリーズしてしまう貧困層

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

精神的に子供のままのバカが子供を作るから、生まれてきた子供が損害を被るんだ

なんて軽く言って切り捨ててしまうのはいかがなものか?

と、つくづく思わされた子供の貧困編だった。マジで学校の授業で取り扱ってもいいくらいのクオリティ。

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

良く分からない問題に、正論(っぽい)ことを叩きつけてるだけでは何にも解決しないことが痛烈に分かる。

 

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

「貧困」や「シンママ」とラベルを張っても、当事者にしかない分かり得ない苦しみや抵抗がある。また先述のように現在は国民からのプレッシャーも厳しい。自身の状況を適切に伝えることも出来ない困窮者は門前払いされて、より一層 役所への不信感を募らせてしまうことも想像できる話だ。

 

 

そんな状態に

自業自得でしょ

とか

情弱だからでしょ

と吐き捨てることによって、何が変わるのか?

と考えさせられた子供の貧困編だった。

 

子供に愛情があっても、それを表現する生活と心の余裕がないことがどれほど辛いことなのか。抜け出せない貧困ループ。貧困の連鎖、なんて一言で片づけられちゃう一例が、作者の徹底したフィールドワークを元に、丁寧に描かれていた。

 

まじで7巻から始まる「子供の貧困編」は別格で考えさせられる。社会勉強として、是非。

 

 

マンガ「健康で文化的な最低限度の生活」
グッときた場面・名言

マンガの「健康で文化的な最低限度の生活」を読んでみて、グッときた場面や名言を紹介するぞ。

 

 

自分に何ができたのか

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

「自分に何ができたのか」…

考えることも大切ですが、

決してそこに振りまわされないように。

 

 

普段温厚な人でも

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

金の重み…

ってのはそーいうモンです。

ギリギリで生活してる彼らにとってはなおさら。

 

 

不幸慣れ

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

人間でのは不幸にドップリ浸かってると、

気力がドンドン奪われて、

何もかも面倒臭くなって、

最後はそこから一歩も動けなくなっちゃうの。

貧すれば鈍する、的な。

 

 

誰にも頼らないことが「自立」ではない

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

誰にも頼らないことや、

生活保護からの脱却だけが、「自立」なのではない

今 彼女に必要なのは、周囲に頼りながら、

様々な制度を利用しながらでも、

日々の暮らしを安定させること。

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

生活に必要な家事育児。

それに必要な佐野さんの気力や体力。

子どもたちが安心して学べる環境。

頼れる先を増やし それらをできる限り安定させる。

私たちが まず目指すのは、

そういう「自立」だ。

「自立」の反対語は「依存」だと勘違いされているが、最近読んだ本でも

自立とは依存先を増やすことだ

という文章があった。たしか、脳性まひの障害を持つ熊谷晋一郎さんの言葉だったと思う。自分ひとりで何でもやろうとするのではなく、適度に他人やサービスを頼るような柔らかい生き方をしたいね。

 

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総括:健康で文化的な最低限度の生活

今回の記事は、僕の数少ない友人に向けて書いた。

大学を卒業して都内のベンチャー企業で働き、必至の努力が報われて20代にして年収は620万円のタイセイ君。調布にある家賃11万円のアパートに彼女と同棲しており、レストランでは「好きなモノ食べてください」と言ってくれる甲斐性がある(ちなみに僕の方が3歳年上である)。そんな彼と、この前 新宿東宝ビルの横でたむろする若者「トー横キッズ」を目撃したときに、

なんか最下層って感じですよね。
勉強・努力不足を積み重ねるとあぁなるんだなぁって…

って言ってまして。半端ないスピード感のベンチャー企業で体調を崩してまで働いている彼からすると、とくに頑張ってる素振りもなく市販薬をまぜまぜして飲んでハイテンションになってるトー横キッズを見てるとイライラしてくるのかもしれない。まぁ、気持ちは分からなくもない。

 

ただ、タイセイ君が忙しくも充実した日々を送れているのは彼自身の力もあるけど、生まれた家・周囲の環境も大きい。そして、生まれながらに貧困を背負っていたり、相性の悪い家族がいる家庭で育つ人もいる。自分じゃどうしようもない問題に巻き込まれてる人もいる。

 

 

もつれ合いながら脱しようとする様を「依存」の一語で切り捨てたり、必要な支援を受けずに日々の生活に追われる様を「情弱」と断定しないでほしい。苦しんでいる人には、その人にしかない地獄があるんだと想像力を働かせてほしい。

 

 

引用:健康で文化的な最低限度の生活

 

僕も読む前は自己責任論者だったけど、考え直させられました。タイセイ君は僕のブログを知らないけど、彼のような順調な生活を送る人にこそ今一度、一読してほしい「健康で文化的な最低限度の生活」でした。

 

 

それでは。

 

 

 

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