【解決しない能力!】『ネガティブケイパビリティ』の書評・名文まとめ

正解を、できるだけ早く!

が求められている。能力といえば、才能や才覚、物事の処理能力。学校教育や職務教育は不断に追求し、目的としているのがそんな能力。問題が生じたとき、的確かつ迅速に対処する能力。それが現在の社会で重要視されている「ポジティブ・ケイパビリティ」だそうだ。

 

その対をなすのがネガティブ・ケイパビリティ

簡単に紹介すると、

  • 不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力
  • どうにも答えが出ない・対処不可能な事態に耐える能力

といった具合。

なんか地味だね…

うん、文字からして分かりにくい。どにかして解決した方がイイじゃん、って思うよな。ポジティブの方の「問題解決能力」に比べて長ったるし、良く分からないけど現在の日本社会で求められている能力ではないのは良く分かる。しかし、

必要じゃなさそう…

と思う人ほど是非、一読してほしい。

 

拙速に理解し解答を出すのではなく、

分からないままでも好奇心を持って放っておく。

その先には必ず発展的な深い理解が待ち受けている。

 

 

いますぐ解決できなくとも、なんとか持ちこたえていく。それがひとつの大きな能力だということに気付き、読んだ後に心がスッと軽くなったのが本作だ。というワケで、今回は「ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力」という本について。あ、記事本文では随所にネタバレや本文の引用もあるので、気になる方はここらでブラウザバックしてね。

 

 

 

 

「ネガティブ・ケイパビリティ(答えの出ない事態に耐える力)」
面白かったポイント

多くの受賞歴をもつ小説家であり、臨床40年の精神科医が悩める現代人に最も必要と考えるのは「共感する」ことだ。この共感が成熟する過程で伴走し、容易に答えの出ない事態に耐えうる能力がネガティブ・ケイパビリティである。
古くは詩人のキーツがシェイクスピアに備わっていると発見した「負の力」は、第二次世界大戦に従軍した精神科医ビオンにより再発見され、著者の臨床の現場で腑に落ちる治療を支えている。昨今は教育、医療、介護の現場でも注目されている。セラピー犬の「心くん」の分かる仕組みからマニュアルに慣れた脳の限界、現代教育で重視されるポジティブ・ケイパビリティの偏り、希望する脳とプラセボ効果との関係……せっかちな見せかけの解決ではなく、共感の土台にある負の力がひらく、発展的な深い理解へ。

引用:朝日新聞出版「ネガティブ・ケイパビリティ(答えの出ない事態に耐える力)」

 

 

本書の内容

  • 第一章 キーツの「ネガティブ・ケイパビリティ」への旅
  • 第二章 精神科医ビオンの再発見
  • 第三章 分かりたがる脳
  • 第四章 ネガティブ・ケイパビリティと医療
  • 第五章 身の上相談とネガティブ・ケイパビリティ
  • 第六章 希望する脳と伝統治療師
  • 第七章 創造行為とネガティブ・ケイパビリティ
  • 第八章 シェイクスピアと紫式部
  • 第九章 教育とネガティブ・ケイパビリティ
  • 第十章 寛容とネガティブ・ケイパビリティ
  • おわりに 再び共感について

からなる本作。

現在の日本において軽視されがちな、すぐに白黒つけずに宙ぶらりんの状態を耐え抜く能力「ネガティブ・ケイパビリティ」について様々な角度から解説されている。

 

 

すぐ分からなくても良い

問題設定が可能で、解答がすぐに出る。

テストや課題が繰り返し行われた学校教育で育った僕らは結果として、解決できない問題に直面したときに閉塞感や無力感に苛まれる。意味なく不安になったり、勝手に自分を責めたりするようにプログラムされてしまっているような感覚。

 

そんな、できるだけ早く解答を出すポジティブケイパビリティとは対をなす概念であるのがネガティブ・ケイパビリティであり、良く分からなくても概念として存在することが分かって以降、僕は心がスッと軽くなった。

 

すぐに分からなくても、きっとわかる日がくる。

むしろ今 すぐに答えが出なかったり理解できなかったりするからこそ到達できる高みがある、ということについて知れたのは僕の人生の中でも大きく、新たな視座になった。

 

 

即断即決しなくても良い

ネガティブ・ケイパビリティの大事さを知った上で、即断即決、ポジティブ・ケイパビリティを偏重することの恐ろしさについても理解できた。

 

詳しくは本編を読んでほしいが、分かりやすいことに飛びつき、理解・解決を急ぐことで取りこぼすコトの重大さ。僕達が毎日感じているように、世の中には答えのない問題が圧倒的に多い。情報が絶え間なく洪水のように押し寄せてくる現代は忙しい。物事をいちいち疑って、正答を出そうとしていたら大変だ。

 

しかし、誰かが提案した「分かりやすい解決」に乗じてしまうことで、取返しのつかない結果になってしまうこともあることが著者の経験からも良く分かった。

 

ちょっと話は飛ぶけど、民族や性別、格差など様々なところで分断が進んでいるのが寛容と不寛容のせめぎ合いだ。色々な問題があるのに解決を急ぐようなポジティブ・ケイパビリティ重視の態度はどうなのか?とも思えた本作だった。

 

 

行き詰まるまでの、行き詰まってからの

行き詰まるまではポジティブ・ケイパビリティ

行き詰まってからはネガティブ・ケイパビリティ

で対処するのがベストなんだと思う。ポジティブとネガティブ、どちらが優れているというモノでもない。やっぱりバランス重視で、ニュートラルの状態を目指したいと思った。必要な時に、どっちのギアにも入れられる柔らかさを持ちたいなぁ。

 

変えられるものを変える勇気がポジティブ・ケイパビリティであり、変えられないものを受け入れる冷静さがネガティブ・ケイパビリティなのかもしれない。

 

 

ネガティブ・ケイパビリティ周りの話

本書は具体的なネガティブ・ケイパビリティの効用だけではなく、概念が生まれた歴史や影響を受けた人物なども詳しくまとめられていた。

 

正直、一週目では

なげぇ…眠くなってきた…
キーツの生涯とか必要なんかコレ…?

と思って部分部分を読み飛ばした。この辺に僕の、答えを性急に急ぐ骨身に染み付いたポジティブ・ケイパビリティの精神が見えた。

 

この前、小田急線が超遅延したときに暇だったので全編 読んでない部分を回ってみたんだけど、物語がグッと浮かび上がるというか…、より一層、ネガティブ・ケイパビリティの肝や骨格が分かるというか…、すぐに効果や結果を求めるような読書の仕方では得られないモノが確実にあった。

 

この部分、必要なのか?
ページ数を稼いでるだけじゃねーの…?

と不可解さを感じても性急に「読まない」という結論を与えずに、不思議さに身を浸しつつ、宙ぶらりんを耐え抜く力の大切さを2週目でも感じさせてくれた本作だった。

 

 

優しい人になれる「ネガティブ・ケイパビリティ」

僕は

  • 新しい知識・知見が得られる本
  • 読んだ後、勇気付けられたりする本

が好きだ。で、本作「ネガティブ・ケイパビリティ」は、そのどちらも満たしてくれていた。

 

とにかく、著者が伝えたいのは

共感できる・することの大切さ

だったように思える。この忙殺とした世の中を生きるために役立つネガティブ・ケイパビリティでもあるけど、それ以上に、すぐに白黒つけないで見守ることの大切さが分かった。

 

この前、タップルで知り合った女性と肉体関係になったけど、

好きだけど別れるときが怖いから、付き合うまでには慎重に吟味したい…

と言ってた友人に、

は?逃げじゃん。
付き合う覚悟もないんなら抱くなよ。
もう連絡とらなければ?

とか好き勝手言って、滅多に怒らない友人をキレさせたことがあった。あの発言に共感性なんてあったもんじゃない。ただ自分の答えを主張してるだけだった。付き合う覚悟て。お互いの関係性も分からないのに、なにをもって「逃げ」とか言えたんだろう。

 

センシティブな彼の側に立って考えれば、(今は)付き合うつもりはなくても、(これから)もしかしたら何か変わるかと思って、僕から見たらダラッとした曖昧な関係を維持していたのかもしれない。少なくとも友人は、僕に解決策を明示してほしかったのではない。

 

すぐに正解を求めようとするポジティブ・ケイパビリティは、寛容さが損なわれがちだ。相手に共感するためにはネガティブ・ケイパビリティが必要なんだ、と本書を通して今、知れたのは幸運だった。

 

 

「ネガティブ・ケイパビリティ(答えの出ない事態に耐える力)」
グッときた文章

「ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力」を読んでみて「これは!」と思った部分、一節を備忘録として抜き出しておく。多くなり過ぎたので数を減らしたが、少しでも気になるフレーズがあれば是非、本編を読んでね。

 

 

宙吊り状態を支える力

アイデンティティを持たない詩人は、それを必死に模索する中で、物事の本質に到達するのです。その宙吊り状態を支える力こそがネガティブ・ケイパビリティのようなのです。

引用:第一章 キーツの「ネガティブ・ケイパビリティ」への旅

 

 

行き過ぎた知性化

行き過ぎた知性化が、何か大切なものを殺してしまうという教えでしょう。

引用:第一章 キーツの「ネガティブ・ケイパビリティ」への旅

 

 

今は理解できない事柄でも…

今は理解できない事柄でも、不思議さや神秘に対して拙速に解決策を見出すのではなく、興味を抱いてその宙吊りの状態に耐えなさいと主張します。ヒトが自然の深い理解に行きつくのには、その方法しかないのです。そうやって得られた理解は、その本人にとっての地図になり海図になるのでしょう。

引用:第三章 分かりたがる脳

 

 

謎や未知の事柄に向き合うときの姿勢

若手文芸評論家に質問し、即解答をくりかえされた大作家が

「俺はもう、あんたにはものを訪ねないよ。

何を聴いても知らないことがないのだから、つまらないよ」

と、冗談っぽくいった会合があったそうな。

 

黒井千次氏は、そこに大作家の本心を感じ取った思いがしました。大作家は、相手に、自分が抱く疑問に参加し、一緒に考えてみる姿勢を期待したのに違いなかったからです。そして大作家の言葉に、謎や未知の事柄に向き合うときの姿勢を読み取って感動したといいます。

引用:第三章 分かりたがる脳

 

 

その人の人格

医師が患者に処方できる最大の薬は、その人の人格であるという考えは正鵠を得ています。

引用:第四章 ネガティブ・ケイパビリティと医療

同じく、

人の病の最良の薬は人である

というセネガルの言い伝えも深く心に残った。

 

 

何もしなくても、持ちこたえていれば

何もできそうにない所でも、何かをしていれば何とかなる。何もしなくても、持ちこたえていれば何とかなる

Stay and Watch. 逃げ出さず、踏みとどまって、見届けてやる。

引用:第六章 希望する脳と伝統治療師

 

 

教育の先に広がっている無限の可能性

この教育の場では、そもそも解決のできない問題など、眼中から消え去っています。いや、たとえ解決できても、即答できないものは、教えの対象にはなりません。

教育者の方が、教育の先に広がっている無限の可能性を忘れ去っているので、教育される側は、閉塞感ばかり感じ取ってしまいがちです。学習の面白さえでゃなく、白々しさばかりを感じて、学びへの興味を失うのです。

引用:第九章 教育とネガティブ・ケイパビリティ

 

 

問題設定が可能で、解答がすぐに出るような事柄は、人生のほんの一部でしょう。残りの大部分は、わけが分からないまま、興味や尊敬の念を抱いて、生涯かけて掴みとるものです。それまでは耐え続けなければならないのです。

引用:第九章 教育とネガティブ・ケイパビリティ

 

 

「運・鈍・根」

研究には必要なのは「運・鈍・根」と言われると、私は深く納得します。「運」が舞い降りてくるまでは、辛抱強く待たねばなりません。「鈍」は文字通り、浅薄な知識で表面的な解決を図ることを戒めています。まさしく、敏速な解決を探る態度とは正反対の心構えです。最後の「根」は根気です。結果が出ない実験、出口の見えない研究をやりつづける根気に欠けていれば、ゴールに近づくのは不可能です。

引用:第九章 教育とネガティブ・ケイパビリティ

 

 

寛容とネガティブ・ケイパビリティ

四日目の夕暮れ時、精も根もつきはて横になっていると、さながら幽鬼のような足取りで女が歩いてきた。だが一緒のはずの赤ン坊がいない。どうしたのだと詰問すると、鈍くよどんで光のない眼を向けながら、

抱いて歩けなかった、もう一歩も。捨ててきた…

とうめくように言った。

引用:第十章 寛容とネガティブ・ケイパビリティ

 

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総括:「ネガティブ・ケイパビリティ(答えの出ない事態に耐える力)」
読書レビュー

解決できないことがあると心配…

という人は是非、本書を手に取って読んでみてほしい。解決できない問題、理解ができない事象に僕らは不安を抱く。分かろうとする脳があるからだ。しかし、無理矢理どうにかして解決しようとすることで苦悩・苦痛が伴うコトがある。はやく白黒つけようと答えを急ぐことで柔軟性が失われて、衝突が起きたりする。

 

ビジネス界で賞賛されるような「即決・即断」、学校で求められていた「素早く正解を見つける能力」。どちらも生きていく上で大切な能力だけど、そればかりを重要視することで、

自分の考えが絶対に合ってるはずなんだから、間違ってる意見なんか聞く価値なし!

どうしたら良いのか分からない問題が多すぎる…
私の能力・努力が足りないから…?

という不寛容や、生きづらさに繋がってしまいかねない。

 

 

どうしようもない現状、対応不可能な現在を、そのまま耐え抜くことの重要性。精神科医であり小説家でもある著者の経験からネガティブ・ケイパビリティの大切さが分かる名著だ。僕らが頭を抱えるような問題は、適度な距離感で放置しておくことで、ひとりでに解決していることもあるんだってよ。

 

 

 

 

それでは。

 

 

 

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