【不安って、何だ?】『不安の哲学』のネタバレ含む感想と書評・名文まとめ

"なんとなく不安を感じる"

というコトが今の時代 少なくないと思う。というか僕が今、それだ。高卒無職。学童のアルバイト先でキャッキャ遊ぶキッズを見て「もっかいこのくらいの年齢からやり直してぇ…」と常に思ってたりする。最近のストレス解消はツムツムで1位を取って少ない友人知人間で勝ち誇ることくらいだ。悲惨。書いてて泣きたくなってきた。

 

そこで本屋に行き、チラッと視界に入って電流が走ったのがタイトルにもあります「不安の哲学」。良い、タイトルが。これが「不安の正体」だったら手に取らなかった。弱ってるとはいえ、

不安なんて人それぞれ状況・年齢によって違うんだろ!

と突っぱねる余力はあった。正体ではなく、哲学というのが良かった。押しつけがましい正論・正解ではなく、あくまで「考える」ということに重点を置かれているように感じられたので、迷わず手に取った次第だ。

 

 

というワケで、今回は「不安の哲学」という本について。

とくに理由はないけど不安…

という方に是非 読んでほしいので、僕が感じた魅力を全部まとめていく。あ、記事本文では随所にネタバレや本文の引用もあるので、気になる方はここらでブラウザバックしてね。

 

 

 

 

不安の哲学
大まかな内容・あらすじ

不安の正体と脱却への道――

不安とは、「未知、制御不能なものをコントロールしようとする時に起こる心の動き」とされています。それはコントロール不可能とされるもので、古代ギリシアでも楽観的に向き合う姿勢は捨てるべきとされてきました。では、私たちに不安を克服する術はないのでしょうか――。

本書は、パンデミックや災害などによる不安が社会全体を覆う今、アドラー心理学の第一人者で孤高の哲学者である著者が不安の正体を問い直したものです。社会の不安のみならず、今この瞬間も多くの人が抱えている対人関係や仕事、病、死への不安を取り上げ、その原因と脱却への道を模索しました。キルケゴール、アドラー、三木清などの思想を手がかりに、不安に囚われず前を向く道を示します。

引用:紀伊国屋書店「不安の哲学」

主な内容は上の通り。

まずは、筆者が感じた「不安の哲学」のポイントを紹介していくぞ。

 

 

アドラー心理学

著者は岸見一郎さん。

なんか聞いたことあるな…

という方もいるでしょう。アドラー心理学を端的にまとめ上げ、ベストセラーにも輝いた「嫌われる勇気」の著者である。そんな岸見さんの本ということもあり、随所にアドラー心理学が散りばめられていた。

胡散臭い起業家とかが名著として紹介してるくらいだから半信半疑なんだけど…

という人も少なくないと思う。僕もそうだった。中学の同級生がアムウェイと一緒にオススメしてきたおかげで僕自身 抵抗が超あったけど、実際に読んでビックリした。パラダイムシフトが起きる人が続出しているのも納得の尖った本だった。

 

そんなアドラー心理学を通底させて、不安の原因を探っていく「不安の哲学」だった気がする。漠然とした不安に押しつぶされそうな方に強くオススメしたい所以だ。

 

 

スッキリ不安が解消するワケではない!

大変読みやすい「不安の哲学」だけど、読了後に不安がスッキリ消えているわけではない。

 

  • 第1章「不安の正体」
  • 第2章「対人関係の不安」
  • 第3章「仕事の不安」
  • 第4章「病気の不安」
  • 第5章「老いの不安」
  • 第6章「死の不安」

といった目次からも分かる通り、人生における普遍的な不安の正体を解説してくれている。しかし、自己完結できる「不安」よりも、他者との関わり・連帯感によって取り除かれる「不安」が多く、どんなに強がったり自分を偽っても、人間は一人で生きていくことができない社会性動物であることに気付かされた。

 

いや不安を解消したいんだけど…?

という方には手放しではオススメできない。少し読めばわかるけど、不安を不安として残す潔さや勇気の重要性にも説かせていた気がする。

 

 

前向きになれる

分かりやすい言葉ばかりではなく、ところどころに意味が汲み取りにくい哲学要素が入っているので自分で考えるコト、反芻することが出来て、著者と対話してるかのように読み進められた。

 

不安があるから行動ができないのではなく、行動しないために不安を使う

といったハッとさせられることも多かったが、読了感には「前向きな気持ち」が残った。

 

 

生きることは進化ではなく、変化

というストンと腑に落ちる言葉をそこかしこで拾い集めることが出来たので、不安は不安として隅に置いておき、今この瞬間に集中して生きるコトの素晴らしさが分かった。人間関係、仕事、病気など色々と思い悩むことはあっても、不安を理由に遅かれ早かれ対処しなければならない課題を避けないようにしたいなぁ。

 

今日この日を満ち足りた一日として終えられる幸福感が不安に勝るようにするためのヒントが散りばめられた「不安の哲学」だった。自分の人生を楽しむことを後押しされるようなサラリと心地良い読了感が得られるぞ。

 

 

 

 

不安の哲学
面白かった部分

不安の哲学を読んでみて面白かったところや、感銘を受けた一節を備忘録として抜き出しておく。多くなり過ぎたので数を減らしたが、少しでも気になるフレーズがあれば是非、本編を読んでね。

 

 

個性的な人間ほど…

嫉妬心をなくすためには、自信を持てといわれる。だが自信はいかにして生ずるのであるか。自分で物をつくることによって。嫉妬からは何物も作られない。人間は物を作ることによって自己を作り、かくて個性になる。個性的な人間ほど嫉妬的ではない。

 

 

不安は人間を…

不安は人間を焦燥せしめ、そして焦燥は人間を衝動的ならしめる。その時人間はいかなる非合理的なものにも容易に身を委ね得るのである。かくて多くの独裁者は、人民を先ず不安と恐怖とに陥れることによって彼等を自己の意のままに動かそうとしたのである。

不安という感情は、なにか他の目的にも使うコトができる。

昔読んだセールスライティング術の本に「不安を煽る」みたいなトピックがあったのを思い出した。

 

 

歳をとれば…

歳をとればできないことは増えます。しかし、だからといって不幸になるとは限りません。かつて持っていたものが今はないと不安を言う人は、若い時もそうだったに違いありません。そのような人は若い時も老いても何を手にしても満足できないでしょう。

個人的な欲望からも「不安」が醸造されることが分かる。

人間の欲望にはきりがなく、欲深くならずに分相応のところで満足する(足るを知る)というコトも普通に生きていくうえで余計なストレス・不安を感じなくするうえで重要なのかもしれない。

 

 

若さと美にしか価値を見てこなかった人は…

もしも若さと美にしか価値を見てこなかった人であれば、更年期に「人目を引く仕方で苦しみ、またしばしば自分に不正がなされたかのように、力のこもった防衛態度を取って不機嫌になり、さらにはこの不機嫌からうつ病になることもある」。

とにかく若く見えることに執念的な熱意があって高額美容液とか買い漁っている人を見ると、

なんとなく不健康だなぁ…

と思うことがあるんだけど、明瞭に理由が分かった気がした。

別にいつまでも若々しくいることは否定しないけど、歳を重ねるごとに滲み出る魅力(円熟味とか)もあるはず。人はいつまでも若くあり続けることはできない。美を若さと紐付ける価値観に、多分ウッとしたんだと思う。間違ってはいないけど、貧相な価値観だとは思う。

 

 

失敗して…

失敗して、自尊感情、威信を失うよりは死を選ぼうとする人がいます。死(自殺)によって、自尊感情、威信が失われることを回避できると考えるのです。

死の不安すら慰戯(夢中になってしまうもの)になってしまうという見地が斬新だった。死の恐怖を誇張することで、向き合わなければならない人生の課題から、意識を死のみに向けて逃げられるらしい。

 

 

他人にどういう風に思われてるか?という不安

「他者への関心を持っていない」ということです。

自分が人からどう思われるかを気にしてばかりいる人は、自分にしか関心がないのです。

強い虚栄心、自惚れ、誇張された自己意識が転じて強大な不安になることもある。我が身を省みさせられた切れ味のある一節。

 

 

不安・苦しみの意味

イタリアの作家パオロ・ジョルダーノは「大きな苦しみが無意識に過ぎ去ることを許してはいけない」といっていますが(コロナの時代の僕ら)、病気になることや病気になるかもしれないという不安の中に生きることに意味があるとすれば、それまでとは人生について違った見方ができることです。

安定・安心から離れることで見える世界もあるっぽい。

 

 

人生は決められたレールの上を…

人生は決められたレールの上を動くようなものではなく、自分で形成しなければなりません。これを知るまでは人生は安定していたでしょう。しかし、先のことは何一つ決まっているわけではなく、自分が人生を形成しなければならないという現実を知ると不安になります。この不安は人生には決められたレールがないことに気づいた時に起こる感情で、むしろ、この不安を感じない人は人生の先が見えると思い込んでいるのです。

何かをやってみよう、というときに

無謀でしょ。
やめた方がいいんじゃない?

と言って行動を抑制する人は決してその人を思っているわけではなく、常識に縛られない人への羨望から言っているコトが多い。そうじゃないにしろ、成功も失敗もしなくていいから自分と同じ場所いてほしい、という思いがあるのかもしれない。

 

「他人の期待」や「世間の常識」が、不安を肥大化させてしまう状況もあるっぽい。

 

 

 

総括:不安の哲学
読書レビュー

漠然とした不安を抱える方にオススメ!

の「不安の哲学」だった。哲学といっても難解すぎることはなく、先述したように、不安を抱えつつも前向きに、不安を原動力に変えてくれるような、読者にエネルギーを充填させてくれるような本だった。

 

全体を通して、一体 不安とは何なのかを考察し、どんな不安があり どうすれば不安を克服・脱却できるか、そして現代のような不確実な時代をどう生きていけばいいのかについて良く分かるぞ。

 

恋人が浮気するんじゃないか不安…

という方は第3章「対人関係の不安」、

なんとなく、このままでいいのか?という不安がある…

という方は第1章「不安の正体」を、

自分の人生の方針が不安…

という方は最終章「どうすれば不安から脱却できるか」がおすすめ。

 

人生の過程で何が起こるのか、それが自分にとってどんな意味があるかはわからないのです。だからこそ、旅の初めにも、途上においても不安になるのです。しかし、この不安は何が起こるかが分からないからこそ起こる感情であって、もしも不安にならないとすれば、人生で何が起こるかが見えると思い込んでいるのです

 

 

過剰かつ過激な情報が目立つネットニュースやSNSによって日常的に「不安」に煽られることが多くなった現代。哲学のように不変の真理を考えることで、不安の渦に巻き込まれることなく、穏やかで充実とした日々を過ごせるようになると思う。

 

 

少しでも気になった方は読んでみてね!

 

 

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