【脳内で流れるカマたくボイス】『お前のために生きてないから大丈夫です』の書評・感想

達観した存在、それがオカマ

である。マツコ・デラックスやカルーセル真紀、ベビーヴァギーなど芸能人で確固たるポジションを築いている人物も多い。なぜか?それは男でも女でもない視座、過酷な人生経験による他者分析、それらに基づく鋭利な言葉にハッとさせられるからである。オカマ≒知識人。昔から小粋で口の悪いゲイキャラが出るアメリカドラマはアタリと相場が決まっている。

 

主語がデカいな…
普通のオカマもいるでしょ

否定はしないが、現状 日本では普通のオカマは珍しい。普通とさせる枠組みが強固な日本では、それらから解き放たれる過程においてオカマは進化している。気がする。もちろん気の触れたチューンのオカマもいるが!

 

 

というワケで、今回はゲイである著者が書いた「お前のために生きてないから大丈夫です」という本について。SNSで大人気な著者のカマたく氏なので、

あんまり本を読んだことない…

という方でもサラッと読めるように仕上がってる。普段 活字に触れることのない方におすすめしたい作品だ。あ、記事本文では随所にネタバレや本文の引用もあるので、気になる方はここらでブラウザバックしてね。

 

 

 

 

お前のために生きてないから大丈夫です
大まかな内容

この世は海。とりあえず脱力して浮いてりゃ、意外と助かったりするものよ

歌舞伎町イチ、癖がすごいゲイバー店員・カマたくによる書籍第二弾。
恋愛、人間関係、仕事、家族、人生。生きていく上で直面するあらゆるお悩み相談へのアンサー本のはずが……
「私、みんなの悩み全然わかってあげられないんだけど! なんでみんな飽きもせずちまちま考えてんのよ」と、頭を抱えるところからスタート!
カマたくに悩みがないのはなぜ? 「幸せになりたい」と思うこと、それが不幸の始まり?
今までの凝り固まった考え方、漠然とした不安、答えの出ないすべての問いに対する、まったく新しい「脱出法」がここに。

引用:KADOKAWA「お前のために生きてないから大丈夫です」

まずは、そんな「お前のために生きてないから大丈夫です」の概要を紹介していくぞ。

 

 

スラスラ読める

「お前のために生きてないから大丈夫です」は

  • 第1章 恋愛
  • 第2章 仕事
  • 第3章 人間関係
  • 第4章 家族と将来
  • 第5章 自分自身

の5章に加え、随所に挟まれる著者のコラムによって構成されている。誰もが日常生活の中で経験するような不安について、Q&A方式でサクサク進むので、普段は活字を読まない方でもスラスラ読んでいけると思う。

 

 

そんじょそこらの悩み相談本じゃない

お前のために生きてないから大丈夫です」は、読者から投稿された悩みについて回答していく形式の本である。

私、あれ系の本嫌いなんだよね。
なんか毒にも薬にもならないような曖昧な回答が多くって…

という方も少なくないと思う。一般論を飲み込みやすいくらいに噛み砕いて説明されているだけで、正直 あんまり参考にならない本もよくあるよね。

 

しかし、本作品は その手の本じゃない。というか、まともな本なら「お前のために生きてないから大丈夫です」なんてタイトルになるはずがねぇよ。例として一つ、本文から引用してみよう。

 

22年間、彼氏ができたことがない。

男友達はいるけど恋愛に発展しません。

初対面の人に「彼氏いるでしょ」と言われることが多いけど実際いないので悲しい…。

(ちひろさん・22歳 女性)

という、まぁ良く聞く悩みに対するカマたく氏の回答がコチラ。

「彼氏いそうって言われる」発言には、
「この私になんでできない?」ってプライドが滲んでる

「なんで彼氏ができないの?」じゃなくて、正確には「なんでそのままの私で彼氏ができないの?」って不満を感じてる。まぁ、お高い女ね!

そのプライドを象徴する一言が「彼氏いるでしょって言われる」…これよ。見逃せないわ、このアピール!「愛されるタイプなはずです」って主張に見えるわよ。そういう入り組んだめんどくさい自意識が男を遠ざけてるところもあるんじゃないの~?

これである。THEオカマ。ちょっとした文章から滲みだす何かを嗅ぎつける嗅覚・分析が凄まじすぎる。オカマ耐性が低いと一周回って「こいつ性格わるっ!」って思ってしまうのも無理からぬ話だと思う。実際、一般的な「性格が良い」という人畜無害な人物像からは程遠いカマたく氏だ。

 

ちなみにこの後

「求めてた回答じゃないわよね、これ。ごめんなさいね!」

に繋がり、フォロー文に繋がる。流石は一流のオカマ。文章ですら人の感情を左右に揺さぶり、そこを突いてくる。究極で完璧なオカマである。

 

 

軽妙でキレのある文章

つまり、下手に出てバカ丁寧に謝るだけが対処法じゃないってこと。

クレーマーすらもびっくりするような意表をついて、一回黙らせたらこっちのものよ。

などなど、非常に分かりやすい。SNSで何度もバズってる著者でもあり、言葉選びのセンスが良く、随所に出てくるエピソードがヤバくて最初から最後まで退屈せずに読める。話し言葉でわかりやすく、豊かな表現によって悩みが打ち消されていくような感覚があった。

 

ただ、ちょっと刺激的すぎる部分もある。忙しい現代人にとっては分かりやすくて良いのかもしれないが、繊細な人にとってはちょっと毒気が強い気がする。そういう人は読売新聞の「人生案内」の方が良い。読んだことのない方は是非。

 

 

 

 

「お前のために生きてないから大丈夫です」の著者

歌舞伎町のゲイバーで働いているカマたく氏である。

動画の通り、声がデカい。

 

 

 

お前のために生きてないから大丈夫です
面白かった部分

「お前のために生きてないから大丈夫です」を読んでみて面白かったところや、感銘を受けた一節を備忘録として抜き出しておく。多くなり過ぎたので数を減らしたが、少しでも気になるフレーズがあれば是非、本編を読んでね。

 

 

人としての感情

人としての感情が欠落してるようにも見えるわね。

でも、楽に生きられるならよくない?何か問題あります?と思うのよ。

実際その通りだと思う。

そもそも過剰に感情を重要視・特別視することで失敗することだってある。筆者の知人は感情的になったおかげで160万円をFXで溶かしたよ。

 

 

貧しくても

引用:闇金ウシジマくん・第5巻

 

あとね、私は「稼げてない」と「人にやさしく出来ない」に因果関係はないと思う。

お金がなくても、心まで貧しくなったら終わりよ。とりあえず生活できる程度のお金を稼げばいいんだから、そんなに思い詰めないで。

風俗で働いており、

稼げなくてつらい

→人に優しくできない

→客のリピート率が低い

→稼げない

という悪循環に陥ってしまっている女性への一言。痺れるぜ。

 

 

自己肯定感

「自己肯定感がない」って落ち込む人がたくさんいるみたいだけど、そもそも「自己肯定感」なんていう概念がなければ「ある」とか「ない」とか悩んでなかったはずなのよ。SNSとかでこの変な概念が言葉として爆発的に広まったせいで、無駄な悩みが生まれてしまったように感じるわね。

なんとなく

「納得しやすいから」

みたいな理由で広まったとされる自己肯定感についての鋭い分析。

 

 

あなたのことを思って…

本当にあなたのことを思っている人は「あなたのためを思って」とは言わない。この発言はあなたをコントロールしたいか、アドバイスして気持ちよくなりたいかのどっちか。もし本人は完全に善意のつもりだとしても、「私はあなたのことをわかっている」という傲慢さがある時点で、本当の思いやりは持てていない。

 

 

田中みな実以上に「あざとい」のは…

たぶんだけど新垣結衣。

ガッキーのことを「あざとい」って嫌う人はほどんどいないじゃない?でも、嘘かと思うほどかわいいじゃない。演出なしに存在し得ないかわいさでしょ。そこなのよ!

たとえばガッキーって、自撮りがめちゃくちゃ下手なの。そういうギャップを狙っていらっしゃるのか?でも、本当に下手な可能性もある。

そう、天性なのかわざとなのか、分からないのが「本物」なの。完敗よ。

 

 

 

総括:お前のために生きてないから大丈夫です
読書レビュー

カマたくの人生相談を聞きたい人にオススメ!

な「お前のために生きてないから大丈夫です」という本だった。ほんとコレに尽きる。文章は決して固くなく、終始「なのよ」とか「だわね~」みたいな感じ。目の前に髭を蓄えたオカマ(カマたく)がいるような臨場感があり、不思議な説得力が生まれていた。

 

ぶっちゃけ読了感は薄い

サラサラ読めすぎて、簡潔すぎる。

悩み相談なので当たり前だけど、考える余地が少ない。

わかりやすくて、簡潔な方が良いじゃん…?

まぁ単純明快な方が良いのも否定しないけど、「どっちですか?」に「こっちです」だけでは、取りこぼす考えもある。著者のカマたく氏は「悩み=無意味・無駄」みたいなことを言ってたけど、う~~ん…。ちょっと極論がすぎる。ちょっと雑過ぎるというか。そもそも人生に無駄ってあるのか?

 

 

最後の最後にちょっとネガティブレビューになってしまったが、随所にハッとさせられる言葉も多く書かれていた。

人は反省して成長するけど、

その成長にケチ付ける人がいる。

「昔はこうでしたよね?」って。

「はい昔ですけど?」

って思う。

変わるじゃん人は。

集中して読めば1時間程度で読める。

 

現代人の抱える悩みについて、サラッと読めてスバッと回答されているので通勤電車の中などで読むのも良いでしょう。壮絶な過去を持つカマたくの文章は強い。物事を見る角度も違う。深刻そうな悩みにも「あ、その程度のことなのか」と思わせてくれたり、クスッと笑って軽くなる言葉が気持ちの良い「お前のために生きてないから大丈夫です」だった。

 

 

以上!

少しでも気になった方は読んでみてね!

 

 

 

 

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