序盤は新興宗教×禍々しい太古の教典・オーパーツ、という物恐ろしくも興味をかきたてられる魅力的な題材だったのに、なんやかんやあって、迫力のない能力バトルになって人気は急降下、次々と読者が離れていったという切ないエピソードを持つ漫画がある。名前を「劫火の教典(ごうかのきょうてん)」という。却火(きゃっか)じゃなくって劫火(ごうか)ね。
作者は伊勢ともか。前作「懲役339年」では素晴らしい話の構成・キャラクター達を描き、これは先が期待できる漫画家だぞ!という超高評価だった。今回の「劫火の教典」も前評判も良く序盤は順調だったのだが物語が進んでいくにつれて作者別人説、ゴーストライター説、編集者からの圧力節、宗教団体からの圧力節など様々な憶測が飛び交い、よく分からない感じで結末を迎えた。
実際、作者のTwitterを見ても…
既刊として「懲役339年」の方は紹介されているのに「劫火の教典」の文字はない。など、の2文字で方付けられている。文字数は全然 余っているのに、ない。なにがあったんだろうね。
劫火の教典。途中、いや序盤までは最高に良いストーリーのマンガだったんだ。新興宗教なんて腫れ物なテーマを扱う漫画は少ないので僕自身、連載時はワクワクしながら読んでいた。今回はそんな劫火の教典の紹介。
却火の教典
考古学者・軽井沢浩二は実直な男だった。
大学で教鞭をとりつつガソリンスタンドのアルバイトもこなし、
日々を愛する妻と子の為に費やしていた。
妻から第二子の妊娠を告げられ、来たる出費に不安を覚えつつも
幸せな日々を過ごす軽井沢だったが、そんな彼に不幸が突然訪れる。
研究成果の不振を理由とした、実質の解雇通告。家族に相談もできず途方に暮れる軽井沢のもとに、
一人の女学生が訪ねてくる。
悩める軽井沢に対し「先生に資金援助ができる」と言う彼女は、
さらにこう続けた。「光光会って知ってますか?」
引用:Amazon
とまあ物語はそんな感じで始まる。光光会とは作中に登場する新興宗教である。うむ、どことなく物々しい順調な滑り出し、最高だ。
序盤は宗教篇。物語に登場する光光会という新興宗教団体についての組織構成なんかも非常に興味深かった。
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開祖の陶山大光(すやま たいこう)が何故 光光会を発足させたのか。どういう生い立ちで、どんな思いで「劫火の教典」という禍々しい古代のオーパーツを莫大な資金を投じてまで求めたのかなど、それはそれは丁寧に描かれていた。子供の時から利発・論理的な性格なのも十分に伝わってきたし
どんどん歪な思想に傾倒していくような姿もしっかり描けていた。
とまぁ2巻まではホント面白かった
以上。劫火の教典についての私からの意見は以上だ。2巻までは非常に面白かった。僕としては2巻に収録されている23話「心の火」までは読み手が止まらないくらい面白かった。
そこからの展開は目を覆いたくなるように残念だった。色々と伏線のようなものはあったんだけどね、ちょっと風呂敷を広げすぎて回収しきれなくなってしまった感が否めない。もう連載中は『これどう物語締めるんだ…?途中
みたいなこと言ってるしな…』とある意味 続きが非常に気になったが、ちゃんと能力バトルして終わった。紙媒体で買っていた僕としては、これが初めての未完結漫画になるのかとドキドキしたがほどなくして連載開始。打って変わってそれまで新興宗教のドロドロを吹っ飛ばすようなスカッとする少年漫画的バトル展開(超良心的表現)によって幕を閉じた。皮肉だぞ。能力バトルしないんじゃなかったのかよシシバ……
で、この記事を締めても良かったんだけど、気になったことがあったので調べてきた結果を紹介しておこう。
『これは編集者の圧力か…?!』
最終話付近で話題になったシーンがある。こちらだ。
前作からは想像できないような滅茶苦茶な話の展開だったこともあり、この「オレは無茶苦茶なバトルものにするつもりは無かったんだよ!!」というキャラが作者 伊勢ともかの心の声なのではないか?という憶測が飛び交ってた。まぁそれはそうなんだろうけど。
ただ、「懲役339年」から後を追って劫火の教典を読んで失望した読者たちからは
といった、小学館の編集者からの圧力があったのでは?と思い込んでいる方達が多く見受けられた。
劫火の教典から伊勢ともかを知った人はちゃんと『内容がおもんない』『投げっぱなしジャーマン』と低評価されていたが、懲役339年を知っている読者としては納得いかないようで、編集者が物語をダメにしたといわんばかりの擁護意見が目立った。分かるよ。人気がある作品が終わっちゃうと悲しいもんな。僕も過去に『圧勝が看板漫画とかぬかしてグダグダ連載続いてんのにあーうー(あーとかうーしか言えない)が連載終了ってどういうこっだ!編集を呼べ!アンチで沸き返った圧勝のコメント欄見てこい!』みたいな記事書いた覚えがある。
なまじ前作が素晴らしい出来だっただけに、劫火の教典の落ちっぷりは信じがたいものがあった。同感だよ。取ってつけたかのようなバトル展開には目を丸くしたよな。そりゃ編集者が物語をダメにしたとも思いたくなるもんだ。
が答えはノー。
伊勢ともか自身がこう言っているんだから、そうなんだろう。もう編集を悪く言うのは止めよう。編集者だって不規則な生活の中頑張ってんだぞ。というかむしろ劫火の教典の編集は結構 好きにさせてたと思うぞ。
例えば空飛ぶ超能力者のコレとか
都内無差別テロとか
陶山大光が政界進出しようとしたときのオリジナル曲とか
参考までに☟
結構 際どいオウ〇真理教要素あったからな。本当に編集が圧力かけたんならこんなシーンは公表できなかったと思うぞ。政界進出しようと思って失敗かつ無差別テロって、それどこのオ〇ム真理教。連想ゲームで『空飛ぶ超能力(長髪ヒゲ中年)』『政界進出失敗』ってヒント出されたら〇ウム真理教でしょうがそりゃ。
ってわけで僕は編集者の圧力はなかったんだと思う。なにより伊勢ともか先生がこう言っているんだから信じようね。読者がわちゃわちゃ騒いで伊勢先生が漫画界で腫れ物扱いされたらイヤでしょ。
まとめ
ってわけで「却火の教典」についてだった。ホント、途中2巻までは先が読めなくって続きが気になるという週刊連載のお手本のような上手さの劫火の教典だった。
なお伊勢ともか先生は現在、原案として「代闘士ハイコの事件簿」を連載中だ。劫火の教典はおススメできないが、そちらは是非。ハイコがカッコいいぞ。1話はこちらからどうぞ。1巻も既に発売されてる。