そんなこんなで見てくれがあまりよろしくなく、腕の付け根には邪悪な顔をした蛇の刺青の入った男を筆頭とした4人に囲まれてしまった私だが、子供達に懐かれている彼等を見て私は少し安心感を得ていた。
ビル氏に聞くと、彼等のような定職に就かず平日の間昼間から博打を打ち酒を飲む男達のことをフィリピンでは”タンバイ”と呼び一部には”フィリピンの害”とも呼ばれているそうだ。ビル氏の父親と兄がそれであるため、彼はタンバイを極端に嫌っていた。結構な数のタンバイがフィリピンにはいるそうだ
そんなタンバイ達と少しの外国語と身振り手振りでコミュニケーションを取っているうちに私は親戚の自宅警備員のミライ君を思い出した。そして私が「将来の夢とかあるの?」と質問すると奇しくも彼等とミライ君の言っていたこと「きっと良くなる」という言葉が重なったのは本当に驚いた。いまどき珍しいほどの楽観的な考えである。彼等の未来が本当に良くなることを祈ってやまない
子供達よ希望を持つことはよいが今 自分の置かれている状況を見ないものとしてはいけない。軽佻浮薄な未来のへの理想にすがりつき振り回されているなど言語道断。愚の骨頂である。私にも強く言いたい。
そんな私もあやかりたいほどのポジティブさを持つ彼等に誘われて酒を飲んだ。
ビル氏にこのことを話したらなんと罵倒されるか見当もつかないが、彼等を悪者とはどうしても思えなかった私を今となっては褒めたい。
その後は暗くなるまでラム酒とウィスキーを1つずつ同じコップで飲み交わし呂律が回らなくなってきたあたりで彼らの娘さん達に遅くなると危険だからということで帰路に就いた。
そろそろ私もこのフィリピンを離れなくてはならない。
まだまだ何をしたいか、見当がつかない