引き込まれっぷりがヤバい
というレビューが見られるほど強烈な1話で物議を醸しだした『タコピーの原罪』。掲載アプリでは1日あたりの閲覧数が200万を超えたような話題作で、かわいらしい絵柄でホイホイ釣られた筆者の知人2人はことごとく
ひどすぎるっピ!
表紙詐欺っピ!
と脳が破壊されていた。しかし、どちらとも単行本はきっちり買い揃えていた。うむ、わかる。悪趣味にも感じる描写がふんだんに使われてるのに、しっかりと面白いし後味も悪くないの名作たる所以。絵は可愛らしいのに、内容はエゲツナイ『タコピーの原罪』。おくすり飲めたねで毒飲まされたような気分である。
というワケで、今回は『タコピーの原罪』について。
あらすじや見どころを少しだけ紹介させてね。『流行ってるマンガには興味ねぇな…』と読まないで避けている君には是非 読んで後悔してほしい。やっぱり流行る作品にはそれなりに理由があるってマジで。
※ネタバレを含みます!
1コマたりとも余計な情報は入れたくねぇ…
という方はブラウザバック。
全16話しかないタコピーの原罪なので、細心の注意を払って記事にしますがネタバレはネタバレ。余計な情報を入れたくない方は注意してね。
もくじ
ざっくりと!
タコピーの原罪
地球にハッピーを広めるため降り立ったハッピー星人タコピーは、笑わない少女しずかちゃんと出会う。
どうやらその背景には学校のお友達とおうちの事情が関係しているようで…。無垢なタコピーが知るざらついた現実とは!?衝撃のヒューマンドラマ、ここに開幕! [JC上下巻発売中]
1話だけで十分!
不穏な面白さはビシビシ伝わる。
以下のサイトでタコピーの原罪の1話が無料で読めるから、時間のある人はマジで一読してみてね。
Youtubeで聴けるよ!
↑1話が読めるし聴けるぞ。
タコピーの声が最高に良い!
まるでキュートなハムスターのように愛おしいぜ!
………
タコピーの原罪 あらすじ
主人公は「タコピー」。
なんとタコピーは地球外(ハッピー星)から来た生命体。
ひょんなことから地球で『久世しずか』という小学4年生の少女に助けられる。
…
タコに似てる、ということで『タコピー』と命名される。
地球外知的生物っぽく、様々な便利道具を持っているタコピー。
宇宙にハッピーを広めるために旅をしているということもあって、楽しそうな道具をたくさん持っているが、、
……
「空なんて飛べたって、どうせ何も変わらないし…」
と、タコピーの楽しそうな道具に少しも興味を持たない様子。
というのもしずかちゃんは……
タコピーの原罪
おすすめポイント・見どころ
2巻(14話)完結!
信じられないほど短い
というのが『タコピーの原罪』のヤバいところ。
子供の酷い虐待(いじめ)の描写が辛すぎる…
とんでもなく胸糞悪い作品…
というイメージ・レビューが多かったので僕自身 身構えて読み始めたけど、ビックリするくらいサッと読み終えられた。いや、マジで描写はキツイ。問題作と呼ばれるのも納得の歪み。
しかし、16話完結。終わりが見えている分、僕的には最後まで期待して読み進めることができたのが幸い。多忙な方も、息抜きに是非 読んで窒息してほしい。
問題を背負わされる子供たち
メインキャラは主人公『タコピー』のほかには3人。
いずれも家庭環境(主に親)に難があり、自分達ではどうしようもない問題を抱えさせられてしまっている様子。
……
…
ちなみに問題は解決しない。
病んでいるお母さんは病みっぱなし。絵にかいたようなハッピーエンドはない。家庭内の問題に子どもは無力で、人生はそうそう変わらないままという現実。が、そこが良いらしく
似たような境遇だったけど、親近感を持ち続けられた
というレビューが見受けられた。
親だって見方によっては、そこまで極端に悪い存在に描かれていなかった。ネグレクトの親も、自分の生活に精一杯で余裕が持てない状況に追い詰められて逃げてしまっているだけ。夫婦喧嘩ばかりの家庭も、どこかで不幸な負のサイクルに入って互いに追い詰めているだけ。自分がしてきた努力・厳しい教育を子供にも押し付けてしまう親だって、過度に期待しているだけ。どれもどこでも起こりうる現実的な話。
最良のエンディングではないにしろ、メインキャラそれぞれの『自立』を感じられた最後になったタコピーの原罪だった。
超絶健気!
主人公のタコピー
とんでもなく平和的思考
(人間の悪意が分からない)
というのがタコピー。悪の概念がないハッピーな星から来たんだもんね…。
いじめの相談をキャッキャしている同級生たちを見ても『遊びの相談』、子供の前で声を荒げて怒鳴る母親を見ても『にぎやか!』と思うくらい、人間の悪意が理解できない。”いじめ”やら”憎しみ”やら、そんな負感情とは無縁の惑星から来たタコピーである。
そんなタコピーは『しずかちゃんを、ものすごい笑顔にしてみせるっピ!』と意気込むんだけど、まったく役に立たない。それどころか介入することによって事態はさらに泥沼化。ハッピーな道具を駆使して奔走するも、まったくうまくいかない。
それでも、
……
……
……
寄り添ってくれるタコピーが健気すぎて…。
物語の終盤、
何もしてあげられなくてごめんっピ
でもいっつも何かしようとしてごめんっピ
しずかちゃんの気持ち 僕全然分かんなかったのに…
いっつも おはなし きかなくてごめんっピ
というセリフがあるんだけど、もうね、号泣。
なにもできなくても、ずっと寄り添ってくれるタコピーの健気さがヤバい。持ち前のハッピーアイテムではどうしようもなく状況に陥って「わ わかんないっピ…」は可哀そうすぎた。
タコピーにはずっとハッピーでいて欲しかった…
というレビューも多い。作中のタコピーの健気さを是非 読んでみてね。
タコピーの原罪って?
タコピーが犯していた
最初の罪
くらいの認識で良いでしょう。よくキリスト教にある『原罪』と間違う人がいるようだけど、アダムやイブ的な存在が登場しないことからも、タコピーの『最初に犯した罪』的な解釈がピッタリかと。
異星人に一人で道具を使わせたから?
一人で星に戻ったから?
作中 最も大きな伏線が『タコピーの罪』。
これ以上なく分かりやすく、衝撃を受けるので是非 本編で読んでみてね。
とりあえず読んどけ!
総括:タコピーの原罪
テンポが超良いので是非
というのがタコピーの原罪の総評価。
- タコピーの献身的な可愛さ
- 短編ながらも豊かなメッセージ性
- この上ないほどのテンポの良さ
などなど、素晴らしい出来栄え。
『一方的な救済心』では不幸の当事者を幸せにできない、といったメッセージとかもビシバシ伝わってくる。
この漫画では助けてあげよう、救ってあげようという『一方的な救済心』では不幸の当事者を幸せにできない旨が語られています。
不幸に向き合うのも耐えるのも、当事者本人が背負うしかない。
けれど、彼らが立ち直れるよう、現状で踏み留まれるよう、他者が『対話』によって痛みを共有し、幾らかの支えになることならできる。
酷い現実は変わらない。
だけど、そんな日々を生きていける強かさを得られるような、爽快な読了感のタコピーの原罪。
読んだことのない方は是非。
2巻でこれだけ読み応えのある作品は滅多に出会えませんぜ。
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