もくじ
チャイナ(孔 文革)
この温室のような環境で、お前の才能は錆びる!
…
セリフとしての名言よりもシーンとしてグッとくる描写が多かったチャイナ。是非 本編で読んでほしい。
小泉コーチ
あの才能に対して反応しなければ、指導者としてインポテンツに等しい
No man so good, but another may be as good as he.
『上には上がいる』という意味。
連立方程式解ける人間がね…九九の授業に付き合う必要はない
頂上に立たねば見えない景色があるという話ですよ
その薄い羽根では海を渡ることは出来ない
オババ
勝てば官軍負ければ賊軍…
そういう精神が生み出した挫折を随分見てきた
技術叩き込むだけがコーチングと違うぜ、小泉よ。
そんなもの本開きゃ書いてある
愛してるぜ、ペコ
それ以外にも…
チャイナのコーチの一言。中国へのカムバックを狙うチャイナだったが風間にストレート負けしたことで全国出場は果たせず、意気消沈。悔しさすら残らない絶望感、孤独感を感じて『オレはもう、卓球はもう…』と言ったときにコーチが語りかけた『お前の人生は今 始まったばっかりだよ』というセリフ。
人生をかけて、というと大袈裟かもしれないが、私生活を切り捨ててまで取り組んだことで芽が出なかったときほど怖いときはないと思う。年齢にもよるが『落ち込む』なんて生易しいモンじゃなく、文字通り絶望して人生の全てを閉じたくなるような感覚にすら陥る。きっと大人になるまでの過程で結構な人が多かれ少なかれ経験するもんだと思う。
『風の谷のナウシカのような自分の世界を作りたい』
という女性に応える宮崎駿のインタビューがある。
アイキャッチでも分かるように、女性の質問に、宮崎駿は才能を見極めることの必要性を説いている。
昨今では『好きを仕事にしよう!』という言葉を見かける。たしかに好きこそものの上手なり、という言葉もある。しかし、アニメーターや漫画家、芸術家などの表現者やスポーツ選手のような生まれ持っての才能が直に、大きく関係する仕事もあるのが事実だ。綺麗ごとだけで生きていける世界ではない。甘言に殺されることになる。
今回紹介した漫画『ピンポン』では、そんな“才能”に若くして直面したキャラクター達の苦悩と焦燥が痛ましいほどに描かれている。しかし、嫌味はない。どっぷりと落ち込むような読了感ではなく、梅雨明けのような爽快感で幕を引くところに尾田栄一郎(ONE PIECE作者)ですら『天才』、『僕が一生努力してもあんな漫画は描けない』と認める傑作さがあった。
漫画、アニメ、映画それぞれ大成功果たしたピンポン。勿論 漫画がベースだが、アニメ・映画ともに独自のエピソードが組み込まれているので、是非 そちらも堪能してほしい。知れば知るほど深さ、面白さが感じられる超ド級のスルメ漫画である。