【好奇心が身を滅ぼす?】『チ。-地球の運動ついて-』がヤバい件【ネタバレ有り】

10巻以内に終わる面白い漫画

と知人に聞かれたら食い気味に答えているのが『チ。-地球の運動について-』なんだけど、決まって

痴??は???なんて???

と聞き返される。不満。『このマンガがすごい(男部門)2位』にも輝いているのに、どうやらまだまだ一般ピープルには浸透していないっぽい。王様ランキング同様に、作画で忌避されている部分もあるのでアニメ化されたら絶対…いやまて、人気出るかコレ…?

 

というのも『チ。-地球の運動について-』という漫画、分かりやすいマンガではないと思う。主題は『好奇心』や『探求心』。時代や宗教が入り混じり、血で血を洗うようなドロドロとした先にある『知的探求心』。

 

 

 

というキャラクターもいれば、

 

 

 

というキャラクターも登場する。

とにかく一貫して考えさせてくれる傑作マンガである『チ。ー地球の運動についてー』。今回は、まだ読んでいない人に『どんなマンガなんだろ?』と興味を持っていただければ幸いである。

 

 

 

 

 

知的探求心は身を滅ぼす?
『チ。-地球の運動について-』

さぁ、それでは『チ。-地球の運動について-』の魅力を紹介していくぞ。

 

 

タイトルにもある通り『地球の運動』もとい『地動説・天動説』をメインに話が展開していく。

 

Alabama Shakesの『Sound & Color』のように美しい主題からは想像できないほど血生臭いので注意されたし。

 

 

『チ。-地球の運動について-』概要

引用:『チ。-地球の運動について-』第1巻(著:魚豊)

 

主人公の一人、ラファウは12歳ながらも大学に進学するような天才・秀才である。

 

 

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第1巻(著:魚豊)

 

孤児として生まれた逆境もあるが、それを跳ね除けて余る才覚と…

 

 

 

 

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第1巻(著:魚豊)

 

合理的に生きられるような賢さも持ち合わせていた。

 

 

万事順調、なんの不自由もない生活を送っているように見えたラファウだったが、

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第1巻(著:魚豊)

 

 

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第1巻(著:魚豊)

 

 

……

 

 

 

ひとつだけ、ある危険な好奇心を持っていた。

 

 

というのも、ラファウの住む15世紀はC教という宗教が万物の規範となっている。『神は宇宙の中心に地球が創造し、太陽や惑星は地球を中心に回っている』という天動説が通念であり常識。C教が公認する『天動説』こそが絶対的な真理として周知されていた。

 

無論、

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第1巻(著:魚豊)

 

そんな天動説に異を唱えることは何事であろうと、C教に背く『異端思想』と見なされる。天動説の矛盾を正そうとするだけでも重罪とされ、宗教的な迫害を受けることになっていた。

 

 

そんな中、ラファウは天文学に抑えきれない興味を持つ。無論、いかに天才としても…

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第1巻(著:魚豊)

 

絶対的な真理である『天動説』を否定しかねない天文学を学ぶことは親も快諾はしない。むしろ、C教を信じ込む義父をもつラファウである。大学では天文学ではなく、神学を学ぶように勧められてしまう。

 

抑えられない好奇心と、理知的に立ち回ろうとする間で苦悩していたラファウ。

 

 

そんなとき、

 

 

幸か不幸か、ラファウは『禁じられた研究』をした異端者の学者 フベルトと知り合う。釈放されてすぐ『これでまた研究を続けることができる』とフベルト。

 

 

……

 

 

 

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第1巻(著:魚豊)

 

そんなこんなで、フベルトの『異端研究』に付き合うことに。

 

強制・脅迫的に研究に付き合わされるようになったが、指示を待つこともなく能動的に研究を手伝うラファウ。次第に『禁じられた研究』が何なのか、興味を持つようになる。

 

 

そして、

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第1巻(著:魚豊)

 

 

 

 

 

そうして、

  • 毎日 朝がくるのは、地球が自らの軸を回る『自転』をしているから
  • 季節が変わるのは、地球が太陽を軸にして回る『公転』をしているから

という、衝撃の新事実を知る。

 

 

 

……

 

 

 

 

……

 

 

 

 

そして遂に、天動説と対をなす『地動説』の存在を知り……

 

 

 

というのが物語のはじまり。

執筆現在、以下のサイトで1話が無料で読めるので興味を持った方は是非。読む手が止まらないほど面白いぞ。。

 

 

 

 

 

 

ネタバレ注意!
『チ。-地球の運動について-』の引力(魅力)

例によって、ネタバレは極力控えていくつもりだけど、勘の良い諸君等は「なんとなく」で察してしまうかもしれない。そういう人は買え。もう、買え。3巻まとめて買え。僕は3巻まで買った未来の貴方です。信じなさい。買いなさい。

 

それでは、個人的な『チ・-地球の運動について-』の感想と魅力について語っていく。

 

 

絵は下手…(?)

引用:『チ。-地球の運動について-』第1巻(著:魚豊)

 

正直なところ、絵はそこまで魅力的ではないっぽい。端的に言えば、下手らしい。僕の知人に見せたところ、

 

うわ、絵がダメダメだな~…

 

とか言っていたしな。うむ。危うく喧嘩になりかけたが、まぁたしかに絵で『読んでみようかな?』と引き寄せられた人は少ないかもしれない。嗅覚の鋭い人なら絵から『お、良作の予感…』と集まってくるだろうが、流行モノに飛びついているような層にはまったく食いつかないこと必須。絵で惹かれたって人は誇っていい。年間どんだけマンガ読んでんの君?

 

もちろん、僕としては絵が下手だとは全く思えない。

 

キャラの顔に一切の『萌え』とか『流行り』のような商業的な香りが一切しなくて見やすいし、

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第3巻(著:魚豊)

 

手をひとつとっても素晴らしい。心境が一目で分かる、表情豊かな手が描けている。

 

しかし、やっぱり絵の一般受けはしないらしい。多少売り上げがあって、男が2人以上いれば腐女子さんがカップリングして盛り上げてくれるもんだけど、執筆時現在 Pixivで『チ。』って検索しても7件しかヒットしなかったからな。ちなみに1番人気は

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第3巻(著:魚豊)

 

バデーニさんだ。顔に傷跡をもつ隻眼のバデーニさん。傲慢で尊大、自分の知力に一切の疑心も持たない狂気的で俺様的なバデーニさん。設定だけでもヤバいくらい女性人気が出そうなキャラなんだけど、イマイチ伸び悩んでいるのはフランシスコ・ザビエルのような超COOLなヘアースタイルか?ちなみに髪形の名前は『トンスラ(Tonsure)』。色々な宗教の信者が司祭(神父)になる際の通過儀礼として行う崇高な髪形らしいよ(出典:Wikipedia)。

 

 

漫画は最高レベルに面白い

引用:『チ。-地球の運動について-』第3巻(著:魚豊)

 

面白い漫画は絵の上手さ関係ない

とはよく言ったもんで『うわ、絵はダメダメだな~』って言ってた僕の友人でさえ、1巻を読み終えた後は

 

見た目で判断すんのって愚かだよな……

 

と反省、悔い改めていたからして『チ。ー地球の運動についてー』はイマイチな絵を凌駕する面白さがある。普段 マンガを読まない知人でさえドハマりしたことから、純粋に作品として完成度が高いコトも伺える。

 

ちなみに『チ。-地球の運動について-』はマンガ大賞2021で堂々の2位。しかし、順当とは思えない。最新話まで読み進めた僕としては、

これが2位とか…

と、漫画業界の将来の明るさに驚愕してる。これが大賞とれないとか日本の漫画業界凄すぎるだろマジで。。

 

 

では実際に、どこが魅力的で面白いのか?

 

 

半端ないセリフ

月並みな言い方になるが、セリフが半端ない

神学や教会が絶対的で圧倒的な力を持っていた時代に意思を貫く強さを表した作品なので、セリフに帯びる熱量がスゴイのは当然っちゃ当然なのかもしれないが、

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第1巻(著:魚豊)

 

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第1巻(著:魚豊)

 

……

 

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第1巻(著:魚豊)

 

それにしても台詞がヤバいくらい熱い。ほぼ毎話、グッとくるセリフがくるのがたまらない。人生が上手くいってない僕としては、背中を押されるような心強さに思わず泣きそうになる。辛い現状にいる君は、きっと読んでる内にハッとさせられるような含蓄に富んだ台詞回しが圧巻。

 

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第1巻(著:魚豊)

 

痺れるぜ……

 

 

あまりにも台詞が良すぎて、夢の中で復唱するくらい僕は『チ。-地球の運動について-』はセリフの素晴らしさが際立っていると思う。声に出して読みたい日本語。いつかは言ってみたいセリフのオンパレード。必見だ。何度も繰り返すけど、現状 上手くいっていない人は是非 読んでみてほしい。

 

 

逆境と希望

友情・努力・勝利

のように誰が見ても明白な、典型的な面白さは皆無だ。それよりは

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第2巻(著:魚豊)

 

困難で閉鎖的、

 

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第3巻(著:魚豊)

 

差別も平気であるような世界観である。

 

友情もないし、努力もない。勝利というのが何なのかさえ分からない。極めて意味不明なマンガに見える。が、しかし、、、

 

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第3巻(著:魚豊)

 

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第3巻(著:魚豊)

 

絶対的で圧倒的なチカラに歯向かってまで真実を究明しようとするキャラクター達は見応えがありすぎる。権力を持つ誰かに不都合な真実が歪められているような状況で、命懸けで戦い、後続に託すというのは読んでいて熱い。理屈抜きで、読んでいて胸が震える。

 

 

 

引用:『チ。-地球の運動について-』第1巻(著:魚豊)

 

 

知性と継承。

 

知性と熱量。

 

 

どう表現すれば『チ。-地球の運動について-』の魅力を語れるか分からないが、とにかくアツい漫画である。

 

 

 

『チ。-地球の運動について-』の感想・レビュー

 

 

肯定的なレビュー

熱量は狂気へと至る

もう情熱というより狂気。マジキチの域に達している。それでいて読者の目をぐいぐい引き込んで離さない。こんな地味な表紙からは信じられないほどの情熱、いや魂が籠められている。いっそ恐怖すら感じた。こんな作品を描いてくれて、出版してくれてありがとう。

ちなみにP国といった表記は、逃げではなく星新一のエヌ氏などと同じで個性を抜くためだろう。歴史じゃないんですよ、だから責めないでくださいよ、というスタンスをとりたいなら、もっと簡単に架空の国の名前を付ければ終わる話だ。そこをあえてアルファベット表記にしたのは、主眼が歴史に挑むとかそういったところではなく、魂のあり方であることに注目してほしいゆえの、背景の透明化ではないかと思う。

 

全人類に告ぐ

これはもう、漫画界でも最高傑作の1つと言ってよい作品ではないでしょうか。
こんなに心を震わせられる作品に出会うことは中々ありません。
知識の探究に命をかける。
ドラマがそこにあります。

 

 

批判的なレビュー

ファンタジーなのか史実ものなのかハッキリせず混乱

作者の前の作品が話題になったのもあり、期待していたのですがどうもしっくりきませんでした。
理由は、「15世紀」「P王国」などポーランドなどの実在の地域・時代を想起させるにも関わらず、あまりにも史実とかけ離れているからです。
まず、この時代には、作中のように思想警察のような異端審問は行われておらず、天動説がここまで取り締まられてもいませんでした。
これは高校世界史程度の知識で分かることなので、とても混乱しました。

 

萎えた

てっきりガリレオの話だと思ってた。違った。いきなり、P国とかC教で萎えた。歴史物なのに現代スラング使っていて、さらに萎えた。ちょっと博識な人なら考えつきそうなストーリーを勢いで描いている感じ。天文に詳しくない人が読むと頭が良くなった気分になると思う。だから受けているのかなと思う。個人的に面白くないが、読ませる力はすごくある。歴史をあまり作者は知らなそうだし、興味もなさそうなので、他の題材でその力は使った方がいい気がする。

 

その他『グロイのはちょっと……』というようなレビューが見受けられた。

 

結構な頻度で論争になっていたのが『C教=キリスト教?』というコト。たしかに各所のコメント欄を見ていると

『まじかキリスト教最悪だな!』

と安直に宗教批判をしてしまう人もいたが、フィクションはフィクションとして読もうね。ちょっと史実とリンクしている部分もあるので勘違いしやすいけど、これは架空の地動説誕生漫画だ。繰り返すが、安直に宗教批判しないようにね。

 

科学なき宗教は盲目であり
宗教なき科学は不具である

アインシュタイン

 

 

 

 

総括 『チ。ー地球の運動についてー』

こんな人にオススメ

 

共感・熱・感動を与えてくれるセリフ回しは必見だ。ヤバすぎる。なんというか、心当たりがありすぎるんだよ。著書に大ベストセラー『嫌われる勇気』を持つ古賀史健氏が、なんかの著書で

 

『本当の傑作とは、ドストエフスキーのように10年・20年後でも読者のいるような作品のことだ』

 

みたいなことを言ってたんだけど、多分 『チ。-地球の運動について-』もその類。流行り要素が限りなく排除されてるので、時代に埋もれない異彩を輝く傑作として名を残すと思う。実際 お世辞にも上手とは言えない絵柄でもマンガ大賞2位に輝いているんだからな。そんなもん、異作・傑作に間違いないだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな『チ。-地球の運動について-』。

 

まずは少年の葛藤、そしてそれを吹き飛ばす『知』への渇望を堪能してほしい。

 

 

 

 

 

魚豊氏の前作もメチャ面白かったぞマジで

 

こちらも多分オススメ!

 

 

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