落ち着く文章とはなんぞや
と問われたら『おなかがすいたハラペコだ』シリーズを答えたい。問われることはなくとも、是非 就寝前のちょっとした時間に読んでほしい一冊だったのが第4集『月夜にはねるフライパン』だった。
店先でパラパラめくってみると、なんとも良い雰囲気があったので読んでみたら大当たり。孫がいるくらいの著者(僕より50歳以上年上!)だからこそ出てる気がする落ち着き・独特の雰囲気。
エッセイ集でしょ。
もっとこう実学的な本を読むべきなんじゃないの?無職だし
。。。
まぁそれはそうなのかもしれないけど、もっとこう、肩の力といいますか、気負いをなくすべきだと思いまして。焦ってなんとなかなるもんじゃないしな、就活。
というワケで、今回は「おなかがすいたハラペコだ」という作品について。読了後のレビュー・感想をまとめていきます。あ、記事本文では随所にネタバレや本文の引用もあるので、気になる方はここらでブラウザバックしてね。
もくじ
「おなかがすいたハラペコだ。④」
月夜にはねるフライパン 概要
食がテーマのハラペコエッセイ!
ワイルドな話や珍しい食文化、時には気安い自前料理などを縦横に語り尽くすシーナさん。
そのシーナさんがコロナに感染!
気を失ったまま病室に運ばれ、3日ほど眠ったまま。
さらに、退院してから1ヵ月以上も「ハラペコ感」が戻らない!
そこで見つけた「おいしさ」を、今回は語ります。
椎名誠 自著を語る
酒を飲めば、ついでにいろんなものを食べるというところから、世界中でいろんなものを食ってきた。グルメとかいうよくわからないレベルのものは関係ないので、腹がへったらそこら(その地域)にあるおいしいものを分け隔てなく食べてきた人生だった。
『女性のひろば』という、ちょっとぼくとはストレートにイメージがつながらない雑誌の連載「おなかがすいたハラペコだ。」で、行く先々でのおいしい食べ物、これまでの人生で遭遇したうまい食い物の話を大バカエッセイとして書いてきた。30編ほどがたまると単行本にしてくれる。第一巻がその連載タイトルと同じ『おなかがすいたハラペコだ。』、第二巻『おかわりもういっぱい』、第三巻『あっ、ごはん炊くの忘れてた!』に続く今回は第四弾。夫婦とおぼしき二人がコウモリが飛び交う月夜でフライパンやフライ返しを振り回して戦うイラストが、この連載のイラストレーターの西巻かなさんによって品よく面白く描かれている。ぼくはなぜかフライパンにこだわりがあり、それにまつわる話を他にもいっぱい書いた記憶がある。
引用:椎名誠 旅する文学館
僕は「おなかがすいたハラペコだ。」から椎名誠さんを知った。
同じく、本書を読んだ後
面白い考え方するなぁ。
どんな人なんだろ?
と思った人は是非、椎名誠「旅する文学館」も目を通してみると良いよ。
竹田 最後に「一升チャーハン男」こと、ヒロシより。「息子の国語の勉強を手伝っていたら、椎名さんの文章に時々、出会います。その際に『作者はこの時、何を考えていましたか?』という設問があるのですが、著者はそれに正解できるものなんでしょうか?」とのことです。
椎名 それは時々、聞かれるけれどね。ノーです。そもそも問題の作り方がおかしいよ。国語の授業なんだから「これを読んであなたは何を感じましたか? あなたならどう思いますか?」という、児童や生徒の主観であっていいと思う。
というような感じ。
気負いがなく、それでいて柔軟で強靭な考え方が感じられる(気がした)。
おなかがすいたハラペコだ。④
印象的だった文章
「おなかがすいたハラペコだ。」を読んでみて
なんかいいなぁ…
と、なんとなく心に残った部分、一節を備忘録として抜き出しておく。多くなり過ぎたので数を減らしたけど、少しでも気になるフレーズがあれば是非、本編を読んでね。
フライパン病
フライパンを見るとうっとりし、それでもって中になにか肉とかタマゴをいれて火がとおってくると全身がワナワナし、平静ではいられなくなる。
こうしてはいられない、という気持になって思わず立ち上がってしまうが、それでなにかどうする、という方針もポリシーも何もないからしばし全身でフラフラし、また椅子に座って事態の変化に目をそそぐことになる。こういうのはなにかの病気だろうか。フライパン病とか。
引用:フライパンに偏愛
フランスの料理屋にて
会社の仕事でパリに滞在していた著者。
フランス語は良く分からないけど、果敢にレストランに挑戦しつつも失敗を重ねる様子が面白かった。
最初の頃はついついメニューの一番上の方に書かれているのを三品ぐらい注文した。なにが出てくるかわからない。ウェイターが「ファンファンファン?」などとフランス語で質問してくる(質問すんな!)。
引用:フライパンに偏愛
「あぁ、あれが食いたい。あれが食いたい」
子供だったら指でそのフライパンを指さし足をバタバタさせてそっくりかえるところだ。ぼくはしかし全身を覆う悲しみと悔しみを抑えながらその店を出た。
引用:フライパンに偏愛
タコはクビをひねる
タコ釣りはイカの方法とはぜんぜんちがっていて「釣る」というよりも「乗せる」というほうがふさわしい。タコ釣用語を使うとややこしくなるので状態で説明していくと釣り師はそこにいるタコに餌の生き物をみせ「ちょっとどうかね」なんていうとタコは首をひねり考えます。
「あれはなんだろうなぁ?」と考えるわけです。タコの餌を台にのっけてするする海底を動いているから海底でタコが首をひねり「これはなんだろう?」とさらに首をかしげるわけです。ここで「タコのクビはどこにあるのですか?」と賢い少年は聞いてきます。
引用:色っぽいイカさん。流れ者のタコさん。
回転してない寿司
あるとき見様見まねで寿司を作った。
すると「こんな回転していないのは寿司じゃない」という子供らのつれない返事。時代は変則的にねじまがり、いまは子供たちにとって寿司は回転していないと寿司の資格がないそうだ。
引用:へい─お待ち、わしらの握り寿司
本格的なそば
10割そばを食べにいった著者。
で、その味だが、ぼくには全体が硬くて腰も膝もカカトもしっかりついているようなもの凄い思老いそばだった。
だいたいぼくはあまり本格的なそばは不得手なのだ。本格過ぎてしまうとなんでも「しっかり」しすぎてしまって相手に妥協というものがなくなる。
引用:本格そば崇拝教
子供と子供のようなおとっつぁんが好きなモノ
子育てをしていた頃、すでにぼくはモノカキだったので基本的に家にいることが多かった。妻は保育士の仕事をしていたので昼間はそこに行っている。子供らがたまに早く帰ってきて腹をすかせ、ぼくが何か作らなければならない、ということがときどきあった。
当時は「巨人、大鵬、タマゴヤキ」といわれていた。子供と子供のようなおとっつぁんが好きなモノ、がその三つというわけだ。巨人も大鵬もフライパンでは作れないがタマゴヤキなら作れる。
引用:三役揃い踏み
ゴマシオのおにぎり
そうだ。ゴマシオがあったんだ!それに気づき、おもわず立ち上がってしまった。
どこだ?どこだ?あちこち開けたり閉めたり。でもなかなか見つからない。ここしばらく見ていなかったのですっかり忘れてしまっていたのだ。
ああいうものは使っていないとつい存在を忘れてしまい、ゴマシオ自身も忘れられてる、ということに気付き、拗ねてやがてどこかへ行ってしまう。
引用:オニギリおむすび専門店
忘れられたモノが、拗ねて、どこかへ行ってしまう
思えば作中ではイカやらタコに「さん」付けしてたり、ステンレス鍋に侮蔑の目をくれてやったりした著者だった。
総括:「おなかがすいたハラペコだ」
読書レビュー
読んでいて安心する
という不思議な感覚があった「おなかがすいたハラペコだ 第4集 月夜にはねるフライパン」だった。難しい言葉や表現は使われず、正直でユーモアに満ち満ちた文章でいっぱいだった。
最近は焦りに焦って
「お金の稼ぎ方」
とか
「これで受かる!書類選考攻略法!」
みたいな本ばっかり読んでたので、なおさら読み心地が良く感じ、読んでるうちでお腹がすいたり、安心したりした。夜 寝る前にちょっとだけ読むと気持ちよく眠りにつけた。
おもしろすぎて続きが気になった挙句に夜更かしするような感じではなく、気を抜いて読んでるとクスッと笑える絶妙な塩梅。派手な味付けはないけど落ち着く、味噌汁のような一冊なので是非。
それでは!
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