「あれ…もしかしてワタシ、、」
「ひょっとしてオレ、、、」
「「入れ替わってる??!!」」
という映画が大ヒットした。したよね、空前絶後のレベルで。
そんなわけであの映画以降 主人公達が入れ替わったりする漫画は「パクリ」と断定されてしまうことが増えた。絵が綺麗、という漫画家の努力は一転、表題のように「絵だけ綺麗な“ド三流転生モノ”」なんて揶揄される始末。漫画オタクという人種というのは外見・日常生活からは想像できないような辛辣な批評をするもんだ。こわいこわい。
「君の名は」では高校生の(美)男女が入れ替わることで各ストーリーが楽しめたのもある。ではもし、入れ替わる2人が「高校生女子」と「おっさん」であったらどうなったのだろうか?映画はヒットしたのだろうか?そもそも女子高生側からするとゾッとする展開じゃなかろうか?
そんな滅茶苦茶なストーリーを描いた漫画が「どるから」って作品だ。
どるから
K-1の創始者・石井館長が女子高生に転生してしまった件――!!!!!
脱税の罪で実刑判決を受けたK-1の創始者・石井館長。1年間の刑期を終え静岡刑務所を出所した石井館長だったが、その直後、トラックにはねられ即死。
そしてその魂はなんと女子高生・一ノ瀬ケイに乗り移ってしまう!
K-1創世記から20年――格闘界のフィクサー・石井和義が女子高生に憑依(!?)し、もう一度「空手」に向き合う青春浪漫ストーリー。
引用:Amazon
こちらが漫画の紹介文(あらすじ)である。なんと女子高生と入れ替わる「おっさん」は石井和義館長だったのである。ちなみに石井和義は在命である。つまり、今も現実世界にいるおっさん、それもただのおっさんではなく数ある全日本空手選手権大会で優勝し、全国5万人の門下生を指導した空手マスターともいえる屈強なおっさん(脱税で逮捕された)を、何を考えたか漫画の中で女子高生と入れ替わらせたのである。狂気である。
僕は正直 在命人物を取り扱ったマンガは好きではない。外見を美化するのはしゃーないとして、大抵の場合は作者の過度なヨイショが絡むので見るに堪えないギャグシーンなどもあるといよいよマンガをぶん投げたくなる。僕がホリエモンのマンガを読むと「時間を損したな…」と思うのは学べる知識があっても
こういうのが多いからである。ツンデレ、と堀江貴文(47)さんが紹介されたコマなんていらない、というか「見たくない」のである。ホント誰が得するんだこのコマ?
そんなわけで現在もバリバリ生きてる、脱税と証拠隠滅教唆で逮捕された空手男(石井和義)が出てきた瞬間、「那須川天心物語みたいなもんか…」と思い読み手をストップしそうになったが、
登場して早々に
トラックに豪快に轢かれる石井和義氏を見て、「もう少し読むか…」となり、読んでいくうちに魅了された僕だった。走馬灯にキチンと逮捕シーンがあったのも笑った。
『どるから』のあらすじ
あらすじは先述した通りだ。読みやすい画風を知ってもらうために少し画像を入れて紹介させていただく。
脱税の罪で実刑判決を受けたK-1の創始者・石井館長。1年間の刑期を終え静岡刑務所を出所した石井館長だったが、その直後、トラックにはねられ即死。
トラックに跳ねられた後の石井館長は即死、とあるが実際には死ぬまで少しの猶予があり、そこで死ぬ直前に会った「喋るネコ」が現れ、交渉に応じる。
再び目を覚ました石井館長は病院のベッドの上。数人の女子高生に囲まれて戸惑い、鏡を見ると
女子高生になっていた、というワケだ。
無論取り乱す石井館長。
一方、自分の元の体(石井和義としての体)は即死したことをニュースで知る。交渉をしたネコに問い詰めると、
石井館長が事故ったとき、たまたま近くに魂の入っていない女子高生の体があり、肉体は即死していたが魂の状態だった石井館長をその女子高生の体に入れた、とのこと。
もう戻れないのか?、という困惑の中、肉体の元所有者の女子高生、一ノ瀬ケイの記憶に触れる。
ケイは親の残した空手道場を引き継いで経営を切り盛りするも、
どうにも上手くいかず、
ついには命を絶ってしまったことが判明。300万円ぽっちの借金ために自殺をした一ノ瀬ケイの無知・偏狭さに嘆き・怒った石井館長は
自身の正道会館経営などを活かして、一ノ瀬道場の立て直しを決意する。300万円なんてすぐに返済できると石井館長。まぁ石井さんは3億円くらい脱税してたからな。。。
そうしたわけで、3か月という猶予をもらい、借金の返済、道場の再建を目標と定めた女子高生姿の石井和義館長なのであった。
肝心の一ノ瀬ケイの魂はどこにいったのかというと、
意外にも近くにおり、石井館長の傍で道場立て直しを見守ることになった。
石井館長の空手ビジネスが面白い
女子高生の中にオッサンが入る(なんとアブナイ文章か!)、というストーリーは真新しく話題性もある。設定だけでも「読んでみようかな」と思わせる魅力がある。が、その実 興味が先行してしまうと実際に読んだ時に「期待外れだな…」とソッポを向かれてしまう可能性が高くなる。
そんな期待値の高い状態で読まれて、読み捨てられずに人気が出たのは勿論 その期待を超える面白さがあったことに他ならない。絵も大事だが、読者はイラストを見に来たんじゃなく漫画を読みに来てるのだ。オシャレ漫画として名高いブリーチだって絵もモチロン上手いけど、13kmやとか色々 面白かっただろ。
で、「どるから」の何が一番面白いかって、そりゃ石井館長の経営戦略だろう。
自身の経営術、5万席のチケットを完売させ10億円のイベント売り上げ額を叩き出した「興行力」を武器とした道場の再建方法が面白いし、なにより説得力がある。
そんな石井館長の実績と経営能力によって徐々に波に乗っていく道場。
(空白)
が、一ノ瀬ケイが尊敬していた父は「空手家は商人に非ず!」と口にしていたこともあり、「金、金!」と貪欲に利益を追求する石井館長の経営方針が気に入らない。
しかし、周りの人も幸せにするには金も必要、と石井和義館長。両者の思いの行先も気になるところだ。
やっぱり女子高生の中身がオッサンはウケる
ウケる。可愛い女子高生を演じれば演じるほど中身のオッサンの影が際立って面白い。
そして、ウケるだけでなくシリアスもオッサンのおかげでビシッと締まる感じがある。時代の隔たりを含めた話なんかもグッとくるものが多い。
(空白)
女子高生と空手・経営・興行のプロフェッショナルなオッサンの入れ替わり。普通の男と女が入れ替わっただけでなく、ジェネレーションや知識・経験などで様々なギャップを生み出す素晴らしい設定だ。
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」って作品が流行ったが、「どるから」では零細空手道場を継ぐ女子高生の中に実際に石井和義館長が入っている。石井館長の著書を読んだとかじゃなく、実際に入っちゃっているのだ。その点がなんとも面白いと思う。
使えるのか…?と思う知識
つ、使えるか…?と思う豆知識が多かったぞ石井館長。
これしかあらへん、って館長…
カッコいいバトル・可愛い女の子
戦闘シーンが不安だと言っていた作画担当のハナムラ氏だったが、
バトルも上手く描けていた。流石だハナムラ、プリキュア観てるだけあるぜ。
キャラ達は勿論 かっこ可愛いかった。
流石だハナムラ、プリキュア観てるだけあるぜ。
まとめ『どるから』
ってなワケで僕の中で話題の『どるから』という漫画について紹介させていただいた。
「女子高生側からしたら知らないオッサンに体 乗っ取られるとか悪夢もいいところだろ……」と読む前は思った僕だったが、徐々に、女子高生に転生した空手・興行マスター石井和義館長に感銘を受けていった。良いストーリーだったよ龍造寺慶。
外見を過剰に美化しすぎないどころか、若干 悪人面で描かれているところにグッときた。最近 アフタヌーンで連載されてる「おいおい流石にやりすぎだろ…」と思ってしまうキックボクサー自伝マンガを見てきたばっかりだったので余計にそう感じた。本人が好青年でも持ち上げ方が露骨だとね、引いちゃうよ。
その点、『どるから』に出てる石井館長はきちんとオッサンをしているところがイイ。オッサンはどう美化してもオッサンであることが多いからして作中 女子高生と入れ替わるオッサンを石井和義にしたのは良いチョイス。
徐々にバトル展開が多くなってしまうのは正直 微妙だ。個人的には道場経営や興行の成功させ方などのビジネス要素を語っている方が面白いように感じる。石井和義氏自身、Twitterを見れば空手家というよりは実業家として傑物な側面を感じたりするので、そちらを優先させた方がウケると思うのだが…
格闘技選手を企業が応援できるシステム構築できないかな!?
各種保険も完備して一日4〜6時間労働固定給制で稽古時間をしっかりキープ。
選手は+ファイトマネー入る、
格闘技選手は年間4〜6試合ぐらいだから、仕事に影響ない。
格闘技選手は真面目で誠実だから、企業にも沢山メリットあると思う。— 石井和義 (@ishiikazuyoshi) May 10, 2020
なんにせよバトルもビジネスも両方 面白い『どるから』だ。もっと読まれるべき。僕としても胸を張っておススメできる漫画なので是非 読んでほしい。試し読みのリンクを下に貼っておく。