
まず、以下の文を読んでみてください。
やりたいことがあるなら、やりたいことをやればいい。やりたいことをやらずに済ますほど、人生は長くない。
言っていることは正しいのでしょう。しかし、なんとなく『しつこい文章だなぁ、、』と思いませんか。 私は、『うるさいなぁ』と思いました。『分かっとるわ、黙っとれ』とさえ思いました。
改善例としては、
やりたいことがあるなら、やればいい。やりたいことを我慢するほど人生は長くない。
といった感じになります。相変わらず『うるさいなぁ』とは思うものの、『そうなんだよなぁ』という納得が私の中に生まれました。
どんなに洗練された考え方でも、有益な情報を発信していても、文章力がないと
『分かりずらいな・・・』、『なんか幼稚な文章だな・・・』
と思われるばかりか、最悪
『くどいな・・』、『なんかイライラする言い回しだな・・』
と思われかねません。
Twitterにブログ、Facebookなど、インターネットの普及によって一般人の私達は様々な形で文章を書く機会が増えました。勿論 ビジネスでのメールも含まれます。
最近は『何を言うか』、というよりは『誰が言うか』、が重要視されてしまっているようで、文章力は特に大切にされていない印象があります。しかし、文章力は決して 蔑ろにしていいものではありません。むしろ、一般人の私達こそ、文章を読んだ人に書いてある内容をスッキリと理解させることができる『文章力』を鍛えるべきです。
論理的思考力の向上、コミュニケーション能力の向上など様々なメリットもあります。しかし、それ以上に文章力がないことによって伴うデメリットがあることも事実です。
せっかくの貴重な体験、素晴らしい考えがあったとしましょう。
それらが陳腐なモノになるか、共感を得られたり、多くの人々に影響を与えられるモノになるかは文章力にかかっている、といっても過言ではありません。
そこで今回は、分かりやすく、読み手に伝わる文章を書く上で気を付けるべきポイントを教えてくれる良書『残念ながら、その文章では伝わりません』を紹介させていただきます。
Contents
残念ながら、その文章では伝わりません
とりあえず手に取ってみて笑ったのが、表紙のイラスト。1枚の紙を片手に唖然とする上司らしき人と、微笑みを浮かべる部下らしき人。
著者は山口拓郎さん。20年以上 文章で生計を立ててきた、いわば文章のエキスパートです。
公式サイトもあるので、是非訪れてみてください。ちなみに今なら『文章が劇的に上手くなる接続詞』や『ムダゼロ・ミスゼロの人の伝え方のキホン』など、様々な良著が今ならPDFでプレゼントされています。
そんな文章についてのエキスパートが『分かりやすい文章』をテーマに書いているので、スラスラと読み進めることができます。よくある文法書のように仰々しい単語が一切使われずに書かれているので、分かりやすい文章を書く上でのポイントが、すぐに理解できます。
『残念ながら、その文章では伝わりません』の良いポイント
全体を通して、悪い文章によって読み手がどういった反応・誤解をしてしまうのか、などについて触れており、分かりやすかったです。間違った文章、について誰かに添削してもらう、という機会の少ない私にとって非常に勉強になりました。
その中でも、特に良いと思った箇所についてまとめてみます。
NG例・改善例があって分かりやすい
上の画像のように、NG文と改善文がまとまっているので、すぐに合点できて、その後の説明をスッと吸収することができます。
各項が短くまとまっていて読みやすい
200ページ以上あるような本でしたが、スラスラと読むことができ、読むのが遅い私でも読了に1時間もかかりませんでした。
勿論 個人差があるでしょうが、各項が短くまとまっているので、本当に文章を書くのが苦手な人であっても、さらっと読み終えることができると思います。
特に感銘を受けた項目
徹頭徹尾、文章についてのノウハウは惜しげもなく書いてある『残念ながら、その文章では伝わりません』です。参考になるなぁ、と思った項目はいくつありましたが、今回は3つだけ厳選して紹介しておきます。
読点を上手に使う
読点(、←)についてです。皆さんは読点をどう使うか、自信を持って説明できますか?
私も感覚的に、『一文が長くなったら(読点を)打って、文章を見やすくするモノでしょ』と思っていましたが、違いました。そんな感覚的なものではいけません。なぜなら、読点の打ち方ひとつで、文章の意味が大きく違ってしまう場合があるからです。
息子は慌てて私がお願いした家事を手伝った。
という文章を見てみましょう。何の変哲もない文章に見えますね。ただ慌てているのは息子なのか、私なのか、はっきりと分かりますか?
息子が慌てている場合は
息子は慌てて、私がお願いした家事を手伝った。
私が慌てている場合は
息子は、慌てて私がお願いした家事を手伝った。
となります。お分かりいただけたように、読点の打ち方ひとつで意味合いが大きく変わってしまうのです。
読点の打ち方については、『意味を考えて打つ』ということを大原則にして、以下の9つのポイントを押さえておきましょう。
- 長い主語のあとで打つ
(例文)駅前に完成した大型ショッピングモールが、4月6日にオープンする - 冒頭にくる接続詞や助詞のあとに打つ
(例文)しかし、そんなはずはない。 - 接続助詞のあとに打つ
(例文)ダイエットを頑張ったが、体重は落ちなかった。 - 条件や理由、原因を示す語句の後に打つ
(例文)勉強したので、自信がある - 時間や場面が変わるところに打つ
(例文)アイデアを出したところ、相手の表情が急に緩んだ。 - 文、節、句、語など、複数の情報が並列的に並ぶとき、それぞれの間に打つ
(例文)本を読み、絵を描き、散歩をする。 - カギ括弧の代わりに打つ
(例文)景気は必ず回復する、と評論家は断言した。 - 独立語の後に打つ
(例文)いいえ、今回は参加しません。 - ひらがなや漢字が続いて読みにくいときに打つ
(例文)そろそろ、ろうそくに火を灯しましょう。
保留の『が』を避ける
『が』は接続助詞と呼ばれる、重要な文章のパーツです。
そんな接続助詞の『が』には、大きく分けて2つの用途があります。
一つ目は、逆説の『が』と呼ばれるものです。
(例文)たっぷり寝たが、疲れはとれなかった。
(例文)表面は熱かったが、中は冷たかった。
というように、接続助詞の『が』が使われる前の文と、後の文に因果関係があるときを【逆説の『が』】と言ったりします。
2つ目が、【保留の『が』】というものです。これが厄介で、使い勝手が良い反面、論理性を損ねやすく、文章も冗長(無駄が多くてながったるしいこと)になりがちです。
例文を見てみましょう。
夏休みの英語留学先だが、セブ島が気になっているが、そもそも私の英語レベルでついていけるのだろうか。
☝接続助詞『が』の前文後文で因果関係はありません。それに、くどくどしていますし、一瞬 【逆説の『が』】のように読者を感じさせてしまうことも、【保留の『が』】の罪深きところ、と著者の山口さんは指摘しています。
改善例としては
夏休みの英語留学先候補として、セブ島が気になっている。そもそも私の英語レベルでついていけるのだろうか。
というようになります。
あえて、『が』を使う必要がないときは句点(。)を使ったり、言葉を入れ替えた方が良いでしょう。
助詞の連続を避ける
『の』『は』『が』『に』など、日本語には助詞と呼ばれる文章のパーツがあります。
皆さんも何気なく使っているような必要不可欠ともいえる文章のパーツですが、同じ助詞を立て続けに使ってしまうと、幼稚な印象を与えるだけではなく、読み手をイライラさせてしまう場合があります。
(例文)美咲の弟の壮太のお気に入りのカフェに行った。
という文章には、助詞の『の』が立て続けに出現しています。このような文章は読みにくく、さらには野暮ったく幼稚に聞こえてしまうのです。
改善例としては
美咲の弟の壮太がお気に入りだというカフェに行った。
となります。
助詞が連続して読みにくいと感じた際は『言い回しを変える』、『読点を打つ』、『()を使う』、『語調を入れ替える』といった方法があります。
「マジックをキャップをしめずに筆箱に閉まった」といった文章を書いている人は参考にしてみましょう。ちなみに、この文を改善させると、「キャップをしめずにマジックを閉まった」となります。簡潔ですね。
まとめ
何気なく使っている接続助詞や『が』などですが、使い方によって論理性を損ねやすくしてしまうこと。読点の打ち方によって意味合いが大きく変わってしまう場合があること。
勿論 これ以外のもたくさんのテクニック、気を付けるべき点が多々ありました。今回は私が特にハッとさせられた3点を紹介しましたがいかがだったでしょうか。私と同じようにハッとさせられた方も多いのではないでしょうか。
メチャクチャな感性・表現だけれども、なんだか惹かれる、というような人の文章をよく観察してみると、今回のようなポイントをしっかり押さえたうえで書かれていたりします。
勿論 今 あなたが書いている文章でも、おおむね伝わります。日本語を書いているわけですから、伝わりますとも。ただ、どのくらい伝わっているか、誤解を生んでしまってはいないか、意図していないイメージを与えてしまっていないか、という点は不明瞭です。自分が、どういう文章を書いているか分かっていないわけですからね。
『神は細部に宿る(God is in details)』
という言葉があります。『本当に素晴らしいこだわりは、一見しては分かりにくい』というものです。
人に何かを伝える、それも文章を使って伝えるのでしたら、是非 細部について学んでみてはいかがでしょうか。
堅苦しい文章書のように仰々しくなく、簡潔に書かれていてスラスラ学べる『残念ながら、その文章では伝わりません』を、是非 手に取ってみてはいかがでしょうか。