この前、適当に音楽を流し聞いていたら
って曲が流れてきて衝撃を受けたんだけど、今回紹介するマンガ《アフターゴッド》を読んだ時の衝撃に酷似。冒頭の歌詞を見てみよう。
The victim of my love
(あなたは私の愛の犠牲者)
このとっつきづらさ。意味深で厨二心を強烈に刺激してくる感じ。強烈。来月に1巻が発売するくらいの新作だが既にコアな信者を獲得。まだまだ始まったばかりの作品だが《アフターゴッド》には特有の、暗澹たる魅力がある気がしてならない。
で、早速、漫画好きの友人諸君に宣伝してみると
と、妙に評価が低かった。
負けじと『ちょっと東京喰種みたいで良いでしょ?!』と食らいついて見ると
半端ない描き込み量に加えて、シリアスが重すぎるから中高生が読んでハマる作風ではない…
……。たしかに…(もう、君が漫画の批評やってくれよ…)。
ちょっと冒頭から盛り下がってしまったが、僕は超好きな作風のアフターゴッド。売れ筋じゃないかもしれないがハマる人はドハマりするのは間違いない。思春期の時に教室の片隅で『わたしは籠の中の鳥…お前らとは違う……』みたいになったヤツはハマる素質があるから読め。
よく分からない君にも魅力が伝わるように紹介していくので是非、最後まで付き合ってほしい。
もくじ
ネタバレ・画バレ含む!
《アフターゴッド》 概要
…
……
日本は神々に「侵攻」された。
神の居場所が「危険区域」となっている東京で、厳重に閉じられた柵の向こうを覗いていた少女・和花。
友達に会うため佐賀から上京してきたという和花は、警戒にあたっていた研究員・時永と出会う。
そしてこの出会いは、まもなく世界の運命を変えることになる……。引用:裏サンデー
突如顕現した正体不明の巨大生物。
『神』とも形容されるモノの根城となった日本では各地が『危険区域』と政府に指定され、立ち入りが禁止になってしまう区域が出現。数十年経っても解決策は皆無、金網で囲んでおくだけの杜撰な管理に置かれていた。
そこに現れたのが主人公の神蔵和花(かみくら わか)。
佐賀県出身の和花は、親友が消息を絶った場所 東京の危険地区を訪れていた。
…
そこで出会ったのが時永倖行(ときなが さちゆき)。
……
……
地方から出てきた和花。
危険地区への知識は薄いようで、『神』の研究員 時永から指導を受ける。
そして、
- 『神』と目が合うと体が硬直する
- 口に息を吹き込まれると体は水に変えられる
ということを聞き「フルフェイス」と呼ばれる防具を渡され、半ば強制的に装着。
研究員の時永からしても、やはり『神』の正体は不明。
…
奇々怪々、常軌を逸した存在である『神』。
最凶の大災害、などと呼ばれるくらいに並外れた存在であるが、
一部の、特に自殺志願者にとっては『死ぬ前の一瞬の幸せ』とも言われている神。祖父母の介護で精神的に困窮してしまった和花の親友も例にもれず、神様に会いに東京の危険地区へ行ってしまった模様。
すでに神に憑り殺されてしまった可能性が高い親友。
会いに行くだけ無駄にも思えるのだが…
どうにかして神のもとに向かう和花。すると、
ひょんなことから和花をかばう女『宇月よん』に出会う。
異常な身体能力を持つ宇月。
…
一般的な『神』の認識とは異なる情報を語る宇月。
聞けば宗教のような集団に誘われて、神様の部下になったとのこと。
世間一般では『最凶の大災害』と言われる神だが、一度会ったことのあるらしい宇月は陶酔。全人類の敵になっても神に身を捧げる意思。
……
口車に乗せられてか、和花も仲間入りを承諾。
しかし、仲間になるには試験があるらしく…
神の研究員 時永の殺害が条件とのこと。
条件は到底 飲めるものではなかったが、なんとしても神に会いたい和花。
……
………
…
……
………
??????????
《アフターゴッド》 魅力・面白さ
重苦しい雰囲気で始まった《アフターゴッド》。前作の《亜獣譚》でもそうだったけど、頭使って読むから難しい。今回も例によって情報が制限されながらストーリーが進むので序盤は何してるかイマイチ分からない。基本的に江野の描く漫画はムズイ。最新話まで何度も読み返してる読者でさえ、
あいかわらず難しい
という所感だ。圧倒的描き込み量・節々にある魅力的なセリフ回しがあるから「お、なんだろコレ?よく分からんけど面白そうかも…」って読めるけど、一般受けを考えると非常にヤバい。大衆ウケ度外視。一時期のジャルジャルくらい突っ走ってる。
多分、ここまでの説明で8割の閲覧者が『これは多分ハマらんな…』と離脱したと思うけど、残った諸君に向けて魅力と面白さを紹介させていただきたい。絶対に面白くなる作品だから、ダークファンタジー系の漫画が好きな方は是非 最後までお付き合いくださいまし。
現時点で
アフターゴッド 魅力 その1:
圧倒的な描き込み&明瞭な目的・矛盾
……
と、何故か主人公 神蔵和花には『神』の異能が顕現。
…
………
と、圧倒的な描き込み量は健在しているアフターゴッドである。表現のブッ飛びっぷりも素晴らしく、フォントにまでこだわった演出力は圧巻。読んでいて新鮮かつ、1話を読んだだけでも最終目標が『神を殺すこと』だと分かりやすく、流れるように2話を読みたくなる塩梅だ。
神を殺したい主人公が、神と同じような能力があるという矛盾。明確に不明確。うむ、かいけつゾロリみたいになってしまったが第1話としては最高に近いスタートを切ったんじゃないかと。
アフターゴッド 魅力 その2:
考えさせられる
一方通行にならず、ちゃんと読者にも考えさせるところもアフターゴッドの魅力。
……
………
………
答えようのないこと、心をキュッとさせられるような表現が多い。
心が弱ってるときに見ると漫画がぶっ刺さってくる。深夜に見るとヤバい。僕が火曜日の朝バイトに遅刻しやすい原因はアフターゴッドです。
アフターゴッド 魅力 その3:
独特の比喩表現・セリフ回し
……
身体・精神が自分から切り離された様子を『新幹線』を使って表すセンス。離人症を患ってる方いわく、めっちゃくちゃ分かる表現らしい。江野の作品はいつもそう。精神疾患に関わる表現はピカイチに上手い。
また、まだ2桁にも満たない連載数なのに
神という公式が二次創作を禁止している。
や
暴力性が生む万能感は、人の知性を著しく低下させる。
等、含蓄に溢れるセリフ回しも光っている。
現在 連載アプリの方では隔週連載なんだけど、ちょっともう隔週で1話ずつ読むのは辛い。待てなくなってしまったので2巻以降は単行本で買うつもり。こんなに続きが気になったのは『チ。』以来だぜ。。
とりあえず1話は無料だから読め!
《アフターゴッド》総括
ここまで僕の好みの要素が散りばめられておいて、売れるかどうかでいったら微妙なラインかもしれん。前作の『亜獣譚』よりは導入部分がアダルトでないので友達・知人におすすめしやすいのだけれども、まぁ、アレだ。冒頭にもあったように
という意見もある。異世界転生系でも読んでろバカ。
独特な作風に妖艶な絵、含蓄に溢れる描写・表現力。現実世界で消耗しきった読者には重すぎるため敬遠されてしまう気がしてならないが、その分 ハマる人は猛烈にハマるのが江野朱美の漫画である。新興宗教とか起こせそうだもんなマジで。
僕の周囲では賛否両論ある漫画ですが、コンビニで売ってるような漫画雑誌に掲載しているワケじゃないんだから『道徳?倫理観?アイドンノー』くらいのスタンスでドギツイ表現をしている漫画の方が読み応えあると思うんです。
気になった方は是非。
それでは。
こんなゼロ細ブログのリンクからでも今月だけで10冊以上…。これはもう多分 普通に売れてるようです。すまん江野朱美。売れるか?なんて言ってゴメン。
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